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福祉に関する幅広い知識と高い専門性を持つ社会福祉士は、福祉に関わる人であれば取得したい資格の1つです。
しかし、社会福祉士国家試験の合格率は低く、福祉系の資格の中でも難易度の高い資格と言われています。
本記事では、社会福祉士国家試験の合格率やおすすめの勉強方法について紹介します。
社会福祉士国家試験の合格ライン
まずは社会福祉士国家試験の合格ラインについて解説します。
試験の出題数・解答方式は?
社会福祉士国家試験は129問あり、5つの選択肢から正解を選ぶマークシート形式です。
正解は1つとは限らず、2つ選ぶ多肢選択形式の問題もあるため、問題をよく読むようにしましょう。
問題数は2024年度から、129問となり、旧カリキュラムの試験から21問減っています。
2023年度まで:150問(共通科目80問、専門科目70問)
2024年度から:129問(共通科目84問、専門科目45問)
出題科目は、精神保健福祉士国家試験との共通科目は4科目、社会福祉士国家試験の専門科目は2科目の計6科目です。詳細な試験科目は以下の通りです。
科目群 | 試験科目 | 問題数 | |
---|---|---|---|
共通科目 | ① | 医学概論 | 6 |
心理学と心理的支援 | 6 | ||
社会学と社会システム | 6 | ||
② | 社会福祉の原理と政策 | 9 | |
社会保障 | 9 | ||
権利擁護を支える法制度 | 6 | ||
③ | 地域福祉と包括的支援体制 | 9 | |
障害者福祉 | 6 | ||
刑事司法と福祉 | 6 | ||
④ | ソーシャルワークの基盤と専門職 | 6 | |
ソーシャルワークの理論と方法 | 9 | ||
社会福祉調査の基礎 | 6 | ||
専門科目 | ⑤ | 高齢者福祉 | 6 |
児童・家庭福祉 | 6 | ||
貧困に対する支援 | 6 | ||
保健医療と福祉 | 6 | ||
⑥ | ソーシャルワークの基盤と専門職(専門) | 6 | |
ソーシャルワークの理論と方法(専門) | 9 | ||
福祉サービスの組織と経営 | 6 |
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「令和6年度(第37回試験)から適用する社会福祉士試験科目別出題基準(予定版)」
社会福祉士国家試験の概要については、社会福祉士試験の受験資格で詳しく解説しています。
また、社会福祉士の試験情報はこちらをご確認ください。
合格するには何点取ればいい?合格基準点とは?
社会福祉士国家試験に合格するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
出題基準・合格基準 公益財団法人社会福祉振興・試験センター
- 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。
- 1を満たした者のうち、以下の6科目群(ただし、(注意2)に該当する者にあっては2科目群。)すべてにおいて得点があった者。
[1] 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム
[2] 社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度
[3] 地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉
[4] ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎
[5] 高齢者福祉、児童・家庭福祉、貧困に対する支援、保健医療と福祉
[6] ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)、ソーシャルワークの理論と方法(専門)、福祉サービスの組織と経営
129問の60%なので78点以上を取り、なおかつ全ての科目で1問以上正解しなければいけません。ただし、その年の問題の難易度で合格点は補正されます。
また、合格基準点は問題の難易度により前後し、過去6年の合格基準点は以下のようになっています。
実施回 | 合格基準点 |
---|---|
第37回 | 62点以上(得点率48%) ※科目免除の場合:22点以上(得点率48.9%) |
第36回 | 90点以上(得点率60%) ※科目免除の場合:41点以上(得点率61.2%) |
第35回 | 90点以上(得点率60%) ※科目免除の場合:41点以上(得点率61.2%) |
第34回 | 105点以上(得点率70%) ※科目免除の場合:47点以上(得点率70.1%) |
第33回 | 93点以上(得点率62%) ※科目免除の場合:40点以上(得点率59.7%) |
第32回 | 88点以上(得点率58.7%) ※科目免除の場合:37点以上(得点率55.2%) |
第31回 | 89点以上(得点率59.3%) ※科目免除の場合:39点以上(得点率58.2%) |
社会福祉士国家試験の合格率は?
2025年の第37回の社会福祉士国家試験の合格率は56.3%となりました。新カリキュラムでの試験科目に変更され、問題の難易度も変わりましたが、2024年の合格率と同等の50%以上の受験者が合格しています。
また、2024年に行われた第36回では、合格率58.1%となり、前年度より13.9ポイントも上昇しました。それまで過去最高だった第35回を大きく上回り、最も高い合格率となりましたが、第37回の合格率も36回に続いて高い合格率となりました。
第37回が新カリキュラム科目での最初の試験
社会福祉士養成課程は、2021年から新カリキュラムでの実施が始まり、社会福祉士国家試験については2025年の第37回から新カリキュラムの内容が反映されています。
2025年以降の受験者の方は、新カリキュラムの科目の試験対策が必要になります。
過去の社会福祉士国家試験の受験者数、合格率
過去の社会福祉士国家試験の受験者数や合格率について見ていきましょう。
2025年 第37回 社会福祉士国家資格 試験結果
まずは2024年2月2日に実施された、第37回社会福祉士試験の結果から解説します。
2025年の社会福祉士国家試験の合格率は?
2025年の社会福祉士国家試験の受験者数は27,616人で合格者数は15,561人、合格率は56.3%でした。
前年度の受験者数に対して、6,923人減り(20%減少)、過去20回の中でも最も受験者数が少ない結果となりました。
第37回の社会福祉士国家試験 出題傾向は?
2025年の社会福祉士国家試験で出題された問題のポイントをまとめました。
最新の法改正や実務に関連した知識が重要となります。
- 高齢化社会を背景に、地域包括ケアシステムや地域福祉の充実に関連する問題が多く出題された。
- 新しい法律や制度の改正点(例えば、介護保険法や生活保護制度の改正)に関する問題が頻出し、最新の制度理解が求められた。
- 実務に即したケーススタディを通じ、相談援助のプロセスや倫理的な対応を問う問題が多く出題された。
2024年 第36回 社会福祉士国家資格 試験結果
まずは2024年2月4日に実施された、第36回社会福祉士試験の結果から解説します。
2024年の社会福祉士国家試験の合格率は?
2024年の社会福祉士国家試験の受験者数は34,539人で合格者数は20,050人、合格率は58.1%でした。
第36回の社会福祉士国家試験 出題傾向は?
2024年の社会福祉士国家試験で出題された問題のポイントをまとめました。
実務と理論、最新の制度に関する知識のバランスが重要となります。
- 基本的な社会福祉の概念や理論に関する問題が多く出題され、福祉の基礎知識をしっかり理解しているかが問われた。
- 生活困窮者自立支援法や成年後見制度など、比較的新しい制度に関する出題が増え、最新の施策や法律の理解が重視された。
- 実務に基づいたケーススタディや相談援助過程に関する問題が増加し、相談援助のプロセスや実践的な対応力が求められた。
2023年 第35回 社会福祉士国家資格 試験結果
まずは2023年に実施された第35回社会福祉士試験の結果から解説します。
2023年の社会福祉士国家試験の合格率は?
2023年度の社会福祉士国家試験の受験者数は36,974人で合格者数は16,338人、合格率は44.2%でした。
第35回の社会福祉士国家試験 出題傾向は?
2023年の社会福祉士国家試験で出題された問題のポイントをまとめました。
制度や法令に関する幅広い知識に加え、現場での実践力が重視されたようです。
- 生活保護法や介護保険法、障害者総合支援法など、幅広い福祉関連法令に関する出題が多く、制度に関する理解が試された。
- 高齢化社会に伴う福祉ニーズの増加を反映し、高齢者福祉や障害者福祉に関する問題が多く出題され、各分野での実務対応が求めらた。
- 実務に直結する相談援助技術や援助過程の理解を問う問題が引き続き重要視され、ケースに基づいた対応力が試された。
過去の社会福祉士国家試験の合格率推移
過去6年間の社会福祉士国家試験の合格者について、厚生労働省の発表などを参考に解説していきます。
受験者数、合格者数の過去推移
過去の受験者数と合格者数の推移は以下のとおりです。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2025年 | 27,616人 | 15,561人 | 56.3% |
2024年 | 34,539人 | 20,050人 | 58.1% |
2023年 | 36,974人 | 16,338人 | 44.2% |
2022年 | 34,563人 | 10,742人 | 31.1% |
2021年 | 35,287人 | 10,333人 | 29.3% |
2020年 | 39,629人 | 11,612人 | 29.3% |
2019年 | 41,639人 | 12,456人 | 29.9% |
合格者数は、2021年以降年々増加傾向で、合格率も徐々に増加しています。
性別ごとの合格者の過去推移
過去5年における性別ごとの合格者数の推移を見ていきましょう。
女性の方が多く、男女比は男性3~4割、女性6~7割程度で、年によって多少の差はありますが基本的に大きな変化はありません。
受験資格別の合格者の過去推移
受験資格別の合格者の推移についても見ていきましょう。
年度 | 福祉系大学等卒業者 | 養成施設卒業者 |
---|---|---|
2025年 | 8,890人 | 6,671人 |
55.8% | 44.2% | |
2024年 | 11,181人 | 8,869人 |
55.8% | 44.2% | |
2023年 | 9,079人 | 7,259人 |
55.6% | 44.4% | |
2022年 | 6,124人 | 4,618人 |
57.0% | 43.0% | |
2021年 | 5,826人 | 4,507人 |
56.4% | 43.6% | |
2020年 | 6,586人 | 5,026人 |
56.7% | 43.3% | |
2019年 | 7,232人 | 5,224人 |
58.1% | 41.9% |
毎年、福祉系大学等卒業者の割合の方が少し高くなっていますが、両者に大きな差はありません。
年齢別の合格者の過去推移
続いては年齢区分別の合格者の推移を見ていきます。
年度 | ~30歳 | 31~40歳 | 41~50歳 | 51~60歳 | 61歳~ |
---|---|---|---|---|---|
2025年 | 6,992人 | 2,616人 | 3,292人 | 2,134人 | 527人 |
44.9% | 16.8% | 21.2% | 13.7% | 3.4% | |
2024年 | 8,494人 | 3,526人 | 4,380人 | 2,860人 | 790人 |
42.4% | 17.6% | 21.8% | 14.4% | 3.9% | |
2023年 | 7,081人 | 2,865人 | 3,558人 | 2,211人 | 623人 |
43.3% | 17.5% | 21.8% | 13.5% | 3.8% | |
2022年 | 5,173人 | 1,811人 | 2,152人 | 1,282人 | 324人 |
48.2% | 16.9% | 20.0% | 11.9% | 3.0% | |
2021年 | 4,913人 | 1,813人 | 2,149人 | 1,172人 | 286人 |
47.6% | 17.5% | 20.8% | 11.3% | 2.8% | |
2020年 | 5,597人 | 2,076人 | 2,369人 | 1,256人 | 314人 |
48.2% | 17.9% | 20.4% | 10.8% | 2.7% | |
2019年 | 6,050人 | 2,439人 | 2,368人 | 1,269人 | 330人 |
48.6% | 19.6% | 19.0% | 10.2% | 2.6% |
どの年度でも、30歳未満の合格者が最も高い割合になっていますが、これは高校卒業後に福祉系大学や専門学校に進学した人の合格者が多いことが理由です。
30代以降になると仕事や家事と両立して勉強する人がほとんどになるため、合格者の割合は少なくなるようです。
出典:第37回社会福祉士国家試験合格発表について(社会福祉振興・試験センター)
第37回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について
第36回社会福祉士国家試験の合格発表について(社会福祉振興・試験センター)
第35回社会福祉士国家試験の合格発表について(社会福祉振興・試験センター)
第34回社会福祉士国家試験の合格発表について(社会福祉振興・試験センター)
第33回社会福祉士国家試験の合格発表について(社会福祉振興・試験センター)
第32回社会福祉士国家試験合格発表(厚生労働省)
第31回社会福祉士国家試験合格発表 厚生労働省
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社会福祉士転職サポートに登録(完全無料)社会福祉士国家試験の難易度について
ここからは社会福祉士国家試験の難易度について見ていきましょう。
社会福祉士の合格率はなぜ低い?
社会福祉士の合格率は30%前後で、介護福祉士や精神保健福祉士の70%と比べるとかなり低く、難易度の高い資格であることが分かります。
社会福祉士の合格率が低い3つの理由について解説します。
出題範囲が広い
社会福祉士国家試験は19科目もあり、高齢、障害、社会保障など幅広い範囲を勉強しなければいけません。
1つでも0点の科目があると合格できないことからも、どの科目についてもしっかりと対策しなけらばいけないことが合格率の低さに繋がっているのでしょう。
問題の難易度が高い
社会福祉士国家試験の問題には、基本的な知識だけでは解けない問題もよく見られます。
聞き慣れない用語が登場したり、深く理解していないと解けない応用問題があったりと問題の難易度が高いのです。
そのため丸暗記だけで合格するのは難しく、深く理解することが重要となります。
勉強時間が取れない
出題範囲が広い社会福祉士国家試験では、それ相応の勉強時間が必要となります。
社会人になってから資格取得を目指す場合は特に、仕事をしながら勉強時間を確保するのは難しいでしょう。
どんな出題が難しい?
社会福祉士国家試験では、以下の制度に関する設問に苦手意識を持つ人が多いようです。
- 社会保障
- 成年後見制度
専門性が高く複雑なことから、しっかりと勉強して理解を深めなければ得点を取るのは難しいでしょう。
どのぐらいの勉強時間が必要?
社会福祉士国家試験は勉強する範囲が広く、必要な勉強時間は300時間と言われています。
1日の勉強時間が1時間の場合、約10ヶ月の勉強期間が必要ということになります。
ただし、必要な勉強時間は個人差が大きく、300時間勉強したからといって必ず合格できるわけではありません。
自分の勉強の進捗状況や理解度を考えて必要な勉強時間を確保することが必要です。
社会福祉士国家試験に合格するための勉強法は?
社会福祉士国家試験に合格するための勉強法を紹介します。
試験までのスケジュールを立てる
まず社会福祉士国家試験の勉強は長期戦になるため、スケジュールを立てて計画的に勉強を進めていくことが大切です。
受験日から逆算していつから勉強を開始するのか、どのようなペースで進めるのかを考えましょう。
スキマ時間を有効に使う
充分な勉強時間を確保するには、通勤・通学時間や休憩時間などいわゆるスキマ時間をどれだけ有効に活用できるかが鍵となります。
少しの時間でもコツコツと積み重ねることで大きな差になるので、うまく活用するのがおすすめです。
過去問を解く
具体的な勉強方法としては、過去問を解くのは必須です。
過去問を解くべき理由は以下の通りです。
- 問題の傾向がつかめる。
- 試験でのペース配分を考えられる。
- 苦手分野を理解できる。
このように、過去問は効率的な勉強をするために有効と言えます。
自分に合った勉強方法を見つける
社会福祉士国家試験に合格するには、自分に合った勉強方法を見つけて勉強を継続できるかが大きなポイントとなります。
具体的には以下のような勉強方法があります。
- 独学
メリット:自分のペースで学習を進めることができる。
デメリット:分からない問題の解決が難しい場合がある。 - 通信講座
メリット:自分のペースで学習を進めることができる。
デメリット:受講料がかかる。 - スクールに通う
メリット:分からない問題を解決しやすい。
デメリット:授業料がかかる、時間が拘束されやすい。
テキストなどを購入して勉強する独学は、自分のペースで勉強できますが、分からないことをすぐに聞けず挫折しやすいデメリットがあります。
スクールは費用がかかり時間も拘束されますが、先生に質問できたり同じ目標を持つ仲間がいるためモチベーションを保ちやすい面もあります。
それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、自分に合った方法を見つけると継続しやすくなるでしょう。
働きながら社会福祉士の資格を目指している方向けの記事も公開しているので、仕事と受験勉強の両立を目指している方は参考にしてみてください。
まとめ
社会福祉士国家試験の合格率や勉強方法について解説してきました。
社会福祉士国家試験はここ数年で合格率30%程度から、55%前後まで上がっています。
ただ試験の出題範囲は広く、問題数も多いので、計画的に効率よく勉強する必要があります。
一般的に難易度の高いと言われる社会福祉士の国家試験ですが、勉強で得た知識は相談業務などに役立ちますし、資格を持っていると就職や転職で有利になるケースが多いです。コツコツと勉強すれば働きながらでも取得可能なので、ぜひ目指してみてください。