児童発達支援管理責任者(以下、児発管)は、基礎・実践・更新の3つの研修を受講する必要があります。それぞれの受講要件や実務経験も様々ですので、満たすべき要件が分からず、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
この記事を読んで、分からないことを明確にし、研修を受けるための準備にぜひ役立ててください。
目次
- 児発管になるための研修の内容と要件を分かりやすく解説
- 各研修の修了後にできる業務が分かります
- 都道府県別の児童発達支援管理責任者研修の申込み先を掲載
児童発達支援管理責任者になるためには研修が必要?
児発管として働くためには、「基礎研修」「実践研修」「更新研修」の3つの研修を受けなければなりません。
基礎研修を修了し、OJT期間を経て実践研修を修了すると児発管になることができます。
さらに、児発管として働き続けるための「更新研修」を5年度以内に1回受講しなければなりません。
各都道府県が実施している研修に、要件を満たし、必要書類を揃えて申し込みます。
受講決定(受講の許可)を受けると受講することができます。
また、児発管を配置しなければいけない施設や事業所を通して申し込みをする必要があります。ですので、個人で申し込むことは基本的にはできません。
関連記事:児童発達支援管理責任者(児発管)の資格取得・要件、仕事内容について
児童発達支援管理責任者の基礎研修
基礎研修は、最初に受講する研修です。講義と演習を行い、相談支援の基本的な考え方などを学びます。
基礎研修を受けるための必要要件
基礎研修を受けるために必要な要件は、大きく以下の2パターンあります。
- 実務経験が3年以上ある
- 国家資格を持っている
詳しく説明していきます。
実務経験が3年以上ある
5年以上の相談支援業務、または10年以上の直接支援業務の経験があること、かつ老人福祉施設・医療機関等以外での実務経験が3年以上あることが要件となります。
相談支援業務とは、包括支援センターや就労支援などで自立に関する相談に対応し、助言や指導を行うことです。
また、医療機関において任用資格や国家資格を所持した上で相談支援業務に従事したことなどが該当します。
学校での進路や教育相談に従事した経験、児童養護施設などの児童福祉施設で従事した経験も含まれます。
直接支援業務とは、施設や医療機関において介護業務に従事したことや障がい者雇用事業所で就業支援業務に従事したことなどが該当します。
国家資格を持っている
国家資格を保持している場合、以下の実務経験があれば、受講要件を満たすことができます。
- その資格を使用する業務に従事した期間が5年以上
- 直接支援または相談支援の業務に従事した期間が1年以上
また、この場合の国家資格とは、医師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、社会福祉士、介護福祉士などです。
実務経験とは、年間で180日以上の勤務日数がある場合を言います。
1日の勤務時間は問いません。勤務した日数でカウントします。
基礎研修の内容・日程
基礎研修は、以下の2つの研修から構成されています。合計26時間の研修です。
①相談支援従事者初任者研修の講義部分(11時間)
- 障がい者の地域支援と相談支援従事者の役割に関する講義
- 障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の概要並びにサービス提供のプロ セスに関する講義
- 相談支援におけるケアマネジメント手法に関する講義
②(サービス管理責任者及び)児童発達支援管理責任者の講義と演習(15時間)
- サービス管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義
- サービス提供プロセスの管理に関する演習
日程は、各都道府県の研修に関する情報を必ず確認してください。
演習はいくつかの日程があり、その中から日にちを指定される場合が多いようです。
2024年度の東京都、大阪府、愛知県の日程の一例です。
①令和6年7月24日(水)~9月20日(金)
・オンライン型の講義3日
・集合型の演習2日間
②令和6年10月31日(木)~12月25日(水)
・オンライン型の講義3日
・集合型の演習2日間
出典:東京都 サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修(公益財団法人 総合健康推進財団)
①令和7年1月17日(金)~令和7年3月7日(金)
申込受付:令和6年9月9日(月)~令和6年9月26日(木)
②令和7年2月28日(木)~令和7年3月16日(日)
申込受付:令和6年11月18日(月)~令和6年12月2日(月)
出典:令和6年度サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修スケジュール(大阪府)
令和6年6月17日(月)~令和6年9月25日(水)
オンデマンド形式の講義
オンラインまたは集合型式の演習
申込受付:令和6年4月8日(月)~令和6年4月30日(火)
基礎研修が終わった後にできること
児発管は、実践研修を修了した後に正式になれる資格です。
したがって、基礎研修修了後から実践研修の修了までの少なくとも2年は、「見習い」の児発管になります。
この期間をOJTといい、実践研修を受講するために必要な実務経験を積む期間です。
個別支援計画の原案の作成までの業務が可能になります。
以下の要件を満たした上で、当該事業所の児発管として配置できるようになります。
- 実践研修の実務要件を満たすこと
- 児発管が欠如する前から事業所に配置されていて、OJTを実施していること
児発管の育成を進め、従事者数を増やす観点から、正式な児童発達支援管理責任者となる前から、児発管として配置され、業務ができるようになります。
児童発達支援管理責任者の実践研修
実践研修を修了し、初めて正式な児童発達支援管理責任者になれます。
基礎研修とは別に受講の要件がありますので、事前に確認しておきましょう。
実践研修を受けるための必要要件
実践研修をするための要件は以下の通りです。
- 基礎研修を修了していること
- 実践研修の受講前の5年間で2年以上の実務経験があること
- 児童発達支援管理責任者として従事しているまたは従事しようとしていること
大前提として、基礎研修を修了する必要があります。
また受講前の5年間で2年以上の実務経験とは、見習いの児発管としてOJTを行うことを指します。
これまではOJT期間は2年とされていました。
ですが、この期間を6ヶ月に短縮することも認められるようになってきており、基礎研修の受講開始時に、すでに相談支援または直接支援に3~8年従事していた人が該当します。
実践研修の内容・日程
実践研修は、計14.5時間の研修です。
研修内容は以下の通りです。
- 障がい者福祉の動向に関する講義
- サービス提供に関する講義及び演習
- 人材育成の手法に関する講義及び演習理責任者として従事しているまたは従事しようとしていること
- 多職種及び地域連携に関する講義及び演習
基礎研修では、相談支援や個別支援計画に関する内容の基本を学びます。
それに対して、実践研修では、チームアプローチの方法やサービス提供職員への助言や指導などについて学ぶ場面があります。
基礎研修と同じく、日程は各都道府県の研修に関する情報をチェックしておきましょう。
以下は東京都、大阪府、愛知県の日程の一例です。
令和6年12月中旬~令和7年2月下旬
オンライン型の講義と集合型の演習
申込受付:令和6年9月中旬ごろ開始予定
出典:東京都 サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修(公益財団法人 総合健康推進財団)
令和7年1月31日(金)~令和7年2月16日(日)
申込受付:令和6年10月21日(月)~令和6年11月4日(月)
出典:令和6年度サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修スケジュール(大阪府)
令和6年11月11日(月)~令和7年2月26日(水)
オンデマンド形式の講義とオンラインまたは集合型式の演習
申込受付:令和6年9月2日(月)~令和6年9月25日(水)
実践研修が終わった後にできること
実践研修を修了すると、晴れて正式に「児童発達支援管理責任者」となることができます。
OJT期間は児発管業務の一部のみ可能だったのが、一通りのすべての児発管業務ができるようになります。
事業所や施設の児発管として正式に配置することが可能になります。
また、正式な資格であるという点では、転職しやすいタイミングであるとも言えます。
次の研修が更新研修となりますが、実践研修が終わったらすぐに要件を確認しておくと良いでしょう。
児童発達支援管理責任者の更新研修
児童発達支援管理責任者の資格は、実践研修を修了したあとも、定期的に更新研修を受講することで保持できます。
5年度の間に1回更新研修を受け続ける必要がありますので、受講のタイミングと要件に注意しておきましょう。
更新研修の対象者
更新研修の対象者は、以下の要件を満たす必要があります。
- 受講申し込みの時点で、児童発達支援管理責任者として働いている
- 過去5年間に2年以上児童発達支援管理責任者として働いた経験がある
過去の5年度の間に更新研修を受けていない人が対象で、上記の要件を満たすと受講できます。基礎研修、実践研修を修了しているので、細かい実務要件などはないものの、児発管として一定期間働いていないと研修を受けられない点に注意しましょう。
更新研修のタイミング
実践研修修了後、5年ごとに1回の更新研修を受講し修了すると、資格を更新することができます。
ただし、「5年ごと」の解釈が自治体によって異なる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
また、更新研修は、実践研修修了から5年経つまでに1回受講し、その次の更新研修は6年以上の期間が空いても、5年度の単位ごとに1回受講していれば問題ありません。
しかし、更新研修のタイミングを間違えたり、要件を満たさないまま申し込みをすると、受講できず、児発管の資格が取り消しになってしまいます。
更新研修を受講し続けることで保有できる資格ですので、実践研修後や更新研修後は、次回受講するべきタイミングがいつなのか、必ず確認して把握しておきましょう。
更新研修の内容・日程
更新研修は、計13時間の研修です。内容は以下の通りです。
- 障がい者福祉の動向に関する講義
- サービス提供に関する講義及び演習
- サービスの質の向上と人材育成のためのスーパービジョンに関する講義および演習
更新研修では、児発管としてのこれまでの支援方法や関係機関との連携、他の職員への指導などについて振り返り、検証する内容が入ってきます。
基礎研修、実践研修と同じく、日程は各都道府県の研修に関する情報をチェックしておきましょう。
以下は東京都、大阪府、愛知県の日程の一例です。
令和6年9月12日(木)~令和6年10月18日(金)
オンライン型の事前研修と集合型の演習
申込受付:令和6年6月6日(木)~令和6年26日(水)
出典:東京都 サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修(公益財団法人 総合健康推進財団)
令和6年11月18日(月)~令和7年3月14日(金)
240分のオンデマンド講義とレポート課題、2日間の演習
申込受付:令和6年8月20日(火)~令和6年9月4日(水)
出典:令和6年度サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修スケジュール(大阪府)
令和6年9月21日(土)~令和6年11月27日(水)
オンデマンド形式の講義とオンラインまたは集合型式の演習
申込受付:令和6年7月29日(月)~令和6年8月13日(火)
更新研修が終わった後にできること
更新研修は、児発管の資格を保持し続けるための研修ですので、更新研修修了後に新たにできるようになる業務は特にありません。
しかし、研修を受けることは、障がい者福祉の現状などの理解を深めるためにも重要であると言えます。
また、更新研修を受講または修了できなかった場合、正式な児発管としての資格を失うことになります。
知識や経験があり、業務内容への理解や実務に問題がなかったとしても、事業所等でこれまで通り配置されることは認められません。
それまでに積んできた経験や、研修を修了したことを無駄にしないように、次回の研修を受けるタイミングは常に把握しておきましょう。
【都道府県別】児童発達支援管理責任者研修の申し込み方法
児発管の研修は、各都道府県ごとに異なります。要件の確認や必要書類の準備のために早めにチェックしておきましょう。
研修についてまとめている各都道府県のページをピックアップしました。ぜひご活用ください。
児童発達支援管理責任者の研修はオンラインでも受講可能?
児発管の研修は、オンラインでも可能です。
しかし、研修のどの部分をオンラインで受講するかを自分で選択するという意味では難しいと言えます。
なぜなら、演習の部分は、受講者が会場で対面で行う集合型の場合が多いからです。
提示された事例を用いて、支援会議や多職種連携のロールプレイングなどを行うことがあるため、このような形式になっていると考えられます。
ですので、研修の内容のすべてをオンラインで受講することは難しいと言えます。
近年の感染症の流行と、研修のリモート化が進んだ背景もあり、以前よりオンラインで行う部分は増えています。
しかし、ほかの参加者と実践形式で行うカリキュラムもあるので、すべてをオンラインで行うのは難しいと言えるでしょう。
まとめ
受講のタイミングを逃さず、研修を着実に修了するためには、前もって要件や、実務経験の内容と経験年数などをしっかり理解しておくことが大切です。
また、児発管の業務内容は範囲が決められているものの、事業所や働く環境によっては、イメージしていた業務内容や児発管の雰囲気と違う、と感じる場合もあるかもしれません。
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