「実務研修って一体何をするのだろう」と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

ケアマネで働く上で、実務研修は非常に重要なもので、必ず受講しないといけません。
ケアマネになる前に、実際に自分でプランを立ててグループで検証したり、指摘や助言、相談をしながらコミュニケーション力も鍛えていきます。

この記事を読んで「ケアマネの仕事の特徴」を知り、より深みのある「実務研修」にしていきましょう。

この記事の要点まとめ
  • 実務研修の特徴と学ぶべきポイントが分かる。
  • 実際にケアマネが直面した課題や事例が分かり、ケアマネの仕事がイメージしやすくなる。
  • 実務研修で学んだことを活かしながら、これからケアマネとして働く為の心構えを知っておこう。

未経験ケアマネが直面した課題とは?

どのような職業であっても、未経験で仕事を始めるのは不安があると思います。
ケアマネは全く初めての業界ではないものの、仕事内容が大きく変わるため不安を持たれている方もいらっしゃるかと思います。

ここでは、未経験ケアマネが実際に直面した課題や苦労を紹介します

利用者や家族とのコミュニケーションギャップに苦労

利用者様やご家族に分かりやすく説明しようとしても、上手く伝わらない、利用者様やご家族の質問の意図を図り切れていない等、利用者様やご家族とのコミュニケーションが上手くいかないことがあります。

介護保険は、複雑な部分も多く、アマネ自身、制度を理解することに加え専門用語をできるだけ使わずに説明するスキルが必要であったり、利用者様やご家族が伝えたいことを要約して、本心を理解しないといけないため、コミュニケーションに苦労することもあります。

ケアプラン作成での判断に迷う場面が多発

サービス事業所は、ケアプランに位置づけされているサービスしか行えないため、ケアマネの作成するケアプランは重要なものです。

それぞれのサービスがなぜ必要なのか、どのようなサービスを提供して利用者様の生活を支えるのか、それぞれのサービスの内容は介護保険でできることなのか、実現可能なのか等、ケアプランを作成といっても、慣れるまでは「これでいいのかな」「そもそもこのような判断でいいのかな」と迷うことが多々あります。

関係機関との調整が難しくスムーズな連携ができない

ケアマネは、医療機関、介護保険サービス事業所等と連携しながらチームの中心となり、利用者様の支援を行うため、関係機関はケアマネに判断を委ねてきたり、なんでもケアマネに報告したらよいと思われていることもあります。
そのため、ケアマネの業務外のことを依頼されて対応に困ったり、関係機関同士の間に入ったり、利用者様やご家族の思いを関係機関に言いづらいことであっても伝えないといけない場面等が多々あります。

ケアマネになりたての頃は、関係機関との信頼関係がない中で、連携を図っていかなければならないため負担に感じることもあります

法規制や保険制度の複雑さに戸惑い、対応に戸惑ってしまう

介護保険法は、本当に複雑です
例えば、以下のようなことで、戸惑うことがあります。

  • できると思っていたサービスが介護保険では利用できない
  • AサービスとBサービスは併用できない
  • 医療保険でリハビリをしている人は基本的に介護保険ではリハビリできないが、場合によってはできるサービス種別もある等。

介護保険だけでなく医療保険や障がいサービスとの併用の知識等も必要になっていきます

これらの知識は、ケアマネの経験を積んでいく上で身に付くことが多く、おそらくケアマネの多くは初心者の頃、誤った対応をした経験を持っているとよく聞きます。

緊急時の対応に戸惑い、適切な判断ができない

利用者様宅へ訪問したら、利用者様が倒れていた、サービス事業所から、利用者様と連絡が取れず、訪問するが反応がなく、救急要請しないといけない状況になった等、ケアマネをしていると緊急対応を迫られることがあります。

緊急対応は、その場で救急車を呼ぶのか、警察を呼ぶのか等判断をしなければならないため、初めのうちは救急車を呼ぶにしても緊張します。
救急隊員からの質問に上手く答えられず、あたふたしてしまったり、ご家族への連絡が遅くなってしまったりと、その場で適切な判断ができないことがあるかもしれません。

現場で困らないために!未経験ケアマネが実務研修で学ぶべき5つのポイント 

実務研修は、ケアマネとして仕事をする上でとても重要な研修です。

時間とお金もかかり、仕事をしながらの受講となるので大変だと聞きます。
実務研修で得たことを今後の仕事に活かせるように、学ぶべきポイントを5つまとめました
ポイントを押さえ、実務研修に臨むことで、より実りのある研修になるでしょう!

コミュニケーション力を磨く:利用者との信頼関係を築く

ケアマネジャーは、人と人とが関わる仕事なので、コミュニケーションスキルは最も重要なスキルと言えます(利用者様との信頼関係を築く)

担当利用者様とご家族とのコミュニケーションをしっかり取らないことには、プランニングをしてより良いケアに結びつけることができません。

また、コミュニケーションスキルと共に「代弁する力」も重要です。

信頼関係を築くためには、ただコミュニケーションを取れば良いのではなく、利用者様やご家族が言葉に出来ないことをケアマネが把握し、他のサービス事業者や行政に伝える必要があります。

実務研修では、以下のような点を意識することで、コミュニケーション力を身につけていきましょう。

  1. グループ演習があるので、他のメンバーに自分の意見や考えを伝える
  2. 他の方の意見を尊重し、疑問点などは質問する
  3. 価値観や考えは多様であり、正解はない。自身が偏った考えになっていないかを知る
  4. グループのみならず、実務研修受講している方とは積極的にコミュニケーションを図る

ケアプラン作成の基本と応用:現場で即使えるプランニング技術

実務研修は、主にケアプランを作成して、グループで話し合うことになります。
事前に、対象利用者様を決めて、プランを作成するような宿題を出す都道府県もあります。

プラン作成のコツは、「対象利用者様を知ること」です
より深く知ることで、以下のような内容についても、考えやすくなります。

  • 何故自分がこのプランにしたのか?
  • このサービスを繋げる理由は?
  • 利用者様のニーズを引き出し、目標に繋げられているのか?

プランを作成するためには「理由づけ」が必要です
実務研修では、グループの中の方から質問をされます。

その時に、曖昧なプランであると質問に答えられない。
グループ演習が進まないといった感じで、実務研修をしんどく感じてしまうかもしれません。
そうならないためにも、以下4つのポイントを研修の際に心がけると良いでしょう

  1. ケアプランがどんなものなのかを実際のプランを見たり、近くのケアマネに聞いてみる
  2. より身近な利用者様をモデルに実際にプランを作成してみる
  3. プロセスシートをもとに、ニーズを考え目標にと繋げる
  4. 地域の社会資源サービスを調べて、利用者様の自立を促す支援となっているのかを考えながらサービスを繋げてみる

ケアプランに書かれているサービスなど、どのような理由で使うことになったのかを聞けたらより良いです

プランをいきなり作成するのはとても難しいので、5年以上の実務経験を得たのちに介護支援専門員の更新研修の際には、「プロセスシート」のようなものを書いてからプランに反映させるので、プロセスシートを作成してみるのも良いかもしれません

参考記事:ケアマネジャーの更新研修について(ケア人材バンク)

関係機関との連携力:チームアプローチで現場を乗り切る

ケアマネの仕事は、担当する利用者様をチームで支援をしていきます。
そのため、関係機関との連携は不可欠となります。
実務研修でも、ケアプランを作成する際にデイサービスや訪問介護などの他の関係機関と繋げるような支援を必ず入れます。

その際に、関係機関や事業所、行政のサービスや、市民団体、ボランティアなどのサービスの種類を知っておく必要があります

ケアマネが、「何の支援をしているか分からないけど、この事業所にお願いしよう」ということはありません。
「ここはこういうサービスでこういう強みがある」ということをしっかり伝えることで、利用者様や関係機関から信頼を得ることが出来ます

チームアプローチで大切なことは、チームが利用者様の支援やケアプランの目標を1つ1つ解決していき、同じ方向を向いていることです。

利用者様の希望や必要なことを具体的にかつ誰もが分かりやすく簡潔に伝えることで、連携が取りやすくなります。
また、分からないことは素直に「分からない」と伝え、提供しているサービスをもっと良く知っていきたいという姿勢を見せていきましょう。
そうすることで、自然とコミュニケーションも増えて、よりチームアプローチがしやすくなります。

法規則と倫理の理解:守るべきルールを知る

ケアマネジャーには、守るべき規則や倫理があります
この倫理は、ケアマネとして仕事をする上で重要なものなのでしっかりと抑えておきましょう。

利用者主権

利用者様が将来の意思表示をするため、ケアマネは利用者様の支えである存在であることが大切です。
チームの中心は、あくまでもケアマネではなく利用者様であることを忘れてはいけません

人権擁護

判断能力が不自由な場合であっても、その方が自立した日常生活を送るために、人間として基本的な人権を侵害されないようにする必要があります

守秘義務

ケアマネは、利用者様やそのご家族やその周りの環境などありとあらゆる個人情報を聞き出しますが、その個人情報は許可なく勝手に他者に伝えたり渡したりしてはいけません

公平・中立

ケアマネも人間ですので、どうしても価値観の偏りなどが出てしまいます。
しかし、ケアマネとして仕事をする上では、公平・中立に対応しないといけません。
そのためには、自分自身の考えや偏りを知っておく必要があります。

出典:第1章 ケアマネジメントの基本(厚生労働省)

問題解決スキルの向上:現場で慌てないためにトラブル対応力

ケアマネで働いていると、大勢の利用者様やご家族、関係機関と関わっていくためトラブルもたくさん起こります。
そのトラブルも多種多様です。そうした中で、トラブルに対応するために必要なことをまとめました。

記録をしっかりと取る

現場で、必要なのは自身がケアマネとして、やったことや言ったこと、実際の行動やご家族や利用者様の発言、事業所の対応など記録しておく必要があります
また、その際に自分がどのように対応したのか、誰に相談したのかも書いておきます。

仕事量が多く大変ですが、記録があるか無いかでトラブルに対応しやすくなります。
また、他のケアマネが自分に代わって対応する時にも、記録がしっかりとあるとトラブルの対処もできます。

報告、連絡、相談は確実に

上司や先輩ケアマネには、報連相は確実に必要です。

「このサービスを利用してこういう結果になった」「事業所からこういう連絡がきた」「利用者様の希望に添えなくて困っている」など、事前に伝えることで、大きなトラブルが起きる前に助言を得ることが出来るかもしれないことです

トラブルが起こってからであると、信頼関係も無くなり、その後のサービスに結びつけることが難しくなります。

まだまだ、経験が浅いうちは、積極的に報連相(ほうれんそう)を心掛けましょう。

苦労事例や困難事例を知る

全く同じトラブルは少ないかもしれませんが、過去にあった事例やトラブル、事故やヒヤリハットを学んでおくと、いざ同じようなトラブルに出会った時に対応がしやすくなります

トラブルの対応方法や事故・ヒヤリハットは先輩が残してきた記録に残っています。
その記録を見せていただき可能であれば、「トラブルが起こった時にどうしてこの対応をしたのか」「どのように解決したのか」などを聞くと良いです。

また、苦労事例や困難事例はトラブルが付きものです。
そのため、地域ケア会議に出席し、他のケアマネの考えや困難事例を学ぶことも大切です。

未経験ケアマネの実務研修後の心構え

実務研修を終えて、これからケアマネの仕事を頑張っていこうと考えている方も多いのでは無いでしょうか?

ここでは、実務研修後からケアマネとして働く上での心構えを紹介していきます。
これらを知ることで、ケアマネとしての自覚と責任を持って、利用者様の支援に取り組むことができ、ケアマネとしての一歩を踏み出しやすくなるでしょう。

柔軟な対応を心掛ける

ケアマネとして働く上で、フットワークの軽さはとても重要です。

未経験ケアマネの場合、利用者様にサービスを繋げたくても、そのサービスを提供する場所がどういった所か特色を知らないなどは良くあります。
その際に、パンフレットやホームページだけで見て判断するのではなく、事業所の人とあって話を聞いたり、受け入れ人数やどのようなことまで対応可能かなどを知る必要があります
また、実際に会ってコミュニケーションを取ることで関係が築けていき、相談などもしやすくなるでしょう。

サービス事業所は、「あのケアマネは何かあったらすぐに対応してくれるし、連絡くれる」「あのケアマネは、いつも事務所にいるな」「あのケアマネは連絡をしても全然返事を返してくれない」など、色々なケアマネを知っているサービス事業所だからこそ、自然とケアマネの評価をしてしまうという話を聞きます。

未経験ケアマネの場合は、最初は特に肝心なので、しっかりと足を運んで信頼関係を築いていけるようにしましょう

常に学びであることを理解する

介護保険やその他の福祉の制度は、適宜見直しや変更が行われています。
その情報をしっかりと把握し、利用者様やご家族に伝える必要があります

誤った情報は、混乱を招き、トラブルになることもあります。
そのためにも、介護保険制度はもちろんのこと、生活保護や障がい者福祉、児童福祉、医療の制度など日々情報をキャッチする必要があります。

机上で学習することも大切ですが、何より、現場で分からないことはすぐに調べる、聞く、質問するといった姿勢が大切です。
ケアマネを頼りにしている利用者様やご家族はとても多いので、何も分からない状態が続くと、信頼されなくなります。

ケアマネの試験や実務研修受講終了がゴールではありません。
仕事をする上で、常に学んでいくという心構えを持つ必要があります

何事も根拠をもって説明できるようにする

ケアマネをしていく上で、研修の中にも出てきますが「根拠をもって質問する。根拠をもって説明する。」ということが大切になってきます。

それは、現在の職種でも大切になってきます。
現在、介護職として働いている場合「なぜこちらの利用者様には、この介助方法なのか」をご利用者様、ご家族に聞かれた際、すぐに答えることができますか?

みんながやっているから、このように引き継ぎを受けたから…ではなく、なぜ、この介助方法をしているのか、なぜこの薬を服用しているのか、なぜ、居室の環境がこのようになっているのか等、普段から「なぜ」を繰り返し持ち、根拠をもって利用者様、ご家族へ説明できるようにしておくと、ケアマネとして働いても普段から、根拠をもって説明できると言われています。

誰のための支援なのかを意識する

「初めてケアマネジャーとして担当を任されたときは、一生懸命利用者様のことを考え、支援していたのに、経験を積んでいくうちに個別性のないケアマネジメントをしていた。」

「本当は、こっちのデイサービスの方が合っていそうだが、相談員があまり好きではないので、合いそうなデイサービスを紹介しなかった。」

経験を積むと利用者本位ではなく、ケアマネがやりやすいようなケアマネジメントになっていることがあります。

ケアマネジャーとして働き始めたうちから、常に誰のための支援なのか、ケアマネの都合で調整していないか等を意識するくせをつけ、経験を積んだときに、個別性のある、利用者にとってよいケアマネジメントを行っていけるようにしていきましょう

まとめ

実務研修で押さえておくべきポイントや、実務研修後の心構えが分かり、よりケアマネという仕事のイメージがついたのではないでしょうか?

ケアマネは、介護支援専門員と呼ばれ、介護の支援のエキスパートとなります。
利用者様やご家族はより身近なケアマネを一番頼りにしています。

その期待に添えるように、日々勉強やケアマネとしての倫理や姿勢を学び、現場で活かしていく必要があります。
大変なイメージのケアマネの仕事ですが、利用者様やご家族の問題を解決できた時や笑顔になった時など、とてもやりがいのある仕事であることは間違いありません。

実務研修は、ケアマネとして働く最初の一歩となります。
そして、実務研修を終えてからは、実際にケアマネとして責任を持って働いていきます。

ケア人材バンクでは、ケアマネや相談員、障がい福祉専門の転職支援サービスを行っています。
ケアマネ専門の担当者が在籍しており、無料で転職支援が受けられます。

実務研修を終えて、ケアマネとして働いていきたいと考えている方は是非一度ケアマネジャー専門の転職エージェントにご相談ください