ケアマネジャーを目指す方のなかには、実務研修でどのような研修があるのか気になる方も多いでしょう。
ケアマネジャーとして働くには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格後、実務試験を修了しなければなりません。
実務研修は、ケアマネジャーとして必要なスキルを習得するための研修です。
本記事では、実務研修の目的や事前課題の事例、対策すべきポイントについて解説します。
事前準備をしっかり行うことで、リラックスした状態で研修に参加でき、知識とスキルが習得しやすくなるでしょう。
これから実務研修を受けられる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ケアマネ実務研修の事前課題の目的と重要性
介護支援専門員実務研修受講試験に合格した後は、次のステップとして各都道府県が実施する「介護支援専門員実務研修(※以下、ケアマネ実務研修)」の受講が必要です。
受講終了後、都道府県に登録を行うことで初めてケアマネジャーとして業務できます。
ケアマネ実務研修について、以下の点を確認していきましょう。
ケアマネ実務研修の目的
ケアマネ実務研修は「介護支援専門員として必要な知識、技能を有する介護支援専門員の養成を図ること」が目的です。
具体的には、アセスメントや介護サービス計画(ケアプラン)の作成など、ケアマネジメントに関するさまざまな専門知識や技術を学びます。
実際に居宅介護支援事業所などで、介護支援専門員の業務の実習を行うこともあります。
実施時期は都道府県によって異なりますが、国が定めたカリキュラムにそって、87時間以上の研修が実施される決まりです。
研修は、介護支援専門員指導者や市区町村などの行政担当職員や介護支援専門員職能団体の介護支援専門員が講義を行います。
ケアマネ実務研修の重要性
利用者様のケアプランを作成するケアマネジャーには、医療職をはじめとする多職種と連携・協働しながら、専門的な知識とスキルが求められるようになりました。
近年では、ケアマネジャーの質向上がより求められており、任意で実施されていた研修内容が、新たに実務研修に組み込まれ、研修時間は約2倍の87時間へと大幅に増加しています。
さらに、多様化する社会に合わせて介護保険も年々更新されるため、ケアマネ自身の知識をアップデートする必要があるのです。
必要な知識や技術をしっかりと身に付け、多様化するニーズに応えるため、資格取得後5年ごとの更新研修も必要とされています。
ケアマネ実務研修の事前課題の内容と対策
ケアマネ実務研修は、定められた日程に合わせて参加するだけでは修了できず、参加日の前に事前課題の提出が必要です。
事前課題1:テキスト学習
ケアマネ実務研修では、参加時にテキストが配布されます。
テキストは研修当日に使用するほかに、事前課題にも必要です。
テキストには、各疾患に対するケアマネジメントや次章で紹介する事例が載っているため、テキスト内の情報を元にケアプランを作成します。
テキストを読み込み、ケアマネ実務研修を円滑に進められるよう準備しておくと良いでしょう。
事前課題2:課題整理総括表
利用者様のケアプランを作成する前に使用するツールが「課題整理総括表」です。
アセスメントの際に使用すると、利用者様やご家族の抱える課題を可視化・分析でき、介護計画の目標が明確になります。
課題整理総括表は、研修の中で何度も使用し事前課題としても提出が必要です。
そのため、ケアマネ実務研修をスムーズに受講するには、課題整理総括表の記入方法や活用方法を予習しておくと良いでしょう。
出典:介護保険最新情報Vol.379(WAM NET)
事前課題3:ケアプランの作成
事前課題では、テキスト内の情報をもとにケアプランを作成します。
事前に作成したケアプランをもとに、ケアマネ実務研修でグループカンファレンスを行い、よりよいサービスを検討します。
ケアプランを作成したことがない方にとって、さまざまなサービスの中からケアプランを作成することは難しいかもしれません。
事前に職場のケアマネジャーに相談したり、実際のケアプランを見たりして概要を把握しておくと作成しやすくなるでしょう。
ケアマネ実務研修で作成するケアプランに正解はないため、事例に出てくる利用者様にとってよりよいサービスとなるように考えてみましょう。
ケアマネ実務研修の事前課題の事例紹介
ケアマネ実務研修では、具体的なケースに対してケアプランを作成し、課題を解決するための手法を学びます。
事前課題として取り上げられることの多い代表的な事例と、それに基づくケアマネジメントのポイントを見ていきましょう。
骨折で生活に制限があるケースのケアマネジメント
骨折などによる身体的な制約を抱えたケースでは、身体機能の回復と生活の自立支援を両立させるケアマネジメントが重要です。
骨折の程度や治療計画、リハビリテーションの進捗状況を確認していきましょう。
また、医療機関やリハビリ専門職との連携は欠かせません。
たとえば、片足の骨折で歩行が困難な場合、短期間での自宅復帰が可能なのか、それとも施設でのリハビリが必要なのかなどを見極めます。
自宅に帰り、介護保険サービスを導入する際に考えられる提案例は以下の通りです。
提案例① 住宅改修や福祉用具の導入
住宅改修では、段差の解消やドアの開閉、スロープの設置などを検討し、生活しやすい環境を整えます。
また、福祉用具を活用し、歩行器や車椅子のレンタルを検討しましょう。
提案例② 生活を支えるサービスの導入
在宅生活では、生活全般の支援に組み込むことが重要で、入浴・トイレ・食事の動作に支障が出る場合には、訪問介護やデイサービスを提案すると良いでしょう。
これらのサービスを利用することで、身体機能の維持と安全な日常生活が可能になります。
提案例③ 家族負担の軽減
利用者様ご本人だけでなくご家族へのサポートも見逃せません。
ご家族が介護を担う場合、負担が過大になることを防ぐため、レスパイトケア(一時的な介護者の休息支援)を取り入れるなどの工夫も必要です。
認知症の進行でご家族の負担が大きいケースのケアマネジメント
認知症が進行して、ご家族が抱える負担が増大しているケースでは、利用者様ご本人への直接的な支援だけでなく、介護するご家族への支援を組み込む必要があります。
認知症の症状・進行度合い・家族構成・ご家族の介護能力を把握した上で、適切なケアプランを提案しましょう。
デイサービスを利用することで、日中の見守りをプロに任せ、ご家族が一時的に休息を取れる環境が作れます。
また、認知症に特化した施設やプログラムの活用により、利用者様が安心して過ごせる時間を提供することも重要です。
家族支援においては、心理的負担を軽減するための相談の場を設けると良いでしょう。
地域包括支援センターや認知症カフェといった場を活用し、同じ悩みを持つ人々との交流を通じてストレスを和らげる支援も有効です。
終末期におけるケアマネジメント
利用者様が終末期を迎えているケースでは、身体的なケアだけでなく、精神的な支援やご家族の不安を軽減するケアが求められます。
終末期のケアマネジメントは、ご本人の意思や希望を尊重しながら、多職種と連携して総合的なサポートが重要です。
ご本人が終末期を過ごす場所(自宅や施設など)を確認し、その選択を支えるためのサービスを計画します。
自宅での看取りを希望する場合には、訪問看護や訪問介護の導入が必須となるでしょう。また、夜間の急変に備え、緊急時の連絡先を明確にし、24時間対応可能なサービスを利用するのもひとつの手段です。
また、医師や看護師と連携し、ご家族が利用者様の症状や接し方について正しく理解できるよう支援します。
主に、痛みの緩和や生活の質(QOL)を保つためのケアを中心に作成すると良いでしょう。
グループワークで求められるスキル
ケアマネ実務研修ではグループワークが行われます。
グループワークでは、メンバー全員が協力して課題に取り組むための役割が与えられます。
主に「司会進行」「課題発表」「ファシリテーター」の3つがあり、ケアマネジャーとして働くにあたって重要なスキルです。
それぞれの役割を理解し、ケアマネ実務研修に活かしましょう。
司会進行
グループワークの司会進行は、全体の流れを管理し、時間内に課題を達成するためにメンバーをまとめる重要な役割を担います。
目的やゴールの明確化と達成すべき課題の共有
司会進行で大切なのは、ことです。話し合いがスムーズに進むように議題を設定し、適切な順序で進行していきましょう。
全員が意見を出しやすい雰囲気づくり
グループワーク進行中は、一部のメンバーが発言を独占したり、逆に意見を述べない人が出たりするのを防ぐため、発言のバランスを取る調整力が必要です。
客観的な判断
冷静に双方の主張を整理して、よりよい方向へ導く判断力も重要となります。討論も大事ですが、目標達成するために必要かどうかを判断しましょう。
時間配分
特定の議題に時間をかけすぎると、他の重要な話し合いができなくなります。進行状況やタイマーを活用しながら、適宜時間を確認して進行を調整しましょう。
司会進行役が適切に役割を果たせば、グループ全体が効率よく課題を進められます。
課題発表
課題発表の役割を担う人は、グループ内で出た成果を的確に他者に伝える責任があります。
発表はただ読むだけではなく、聞き手を引きつける工夫も重要です。
強調すべきポイントを決める
まず、発表の準備段階では、グループ内で話し合った要点を箇条書きにしたり、適切な順序に並び替えたりして、聞き手が理解しやすい発表を意識しましょう。
どの部分を強調したいかを決め、発表のときはできるだけ初めに強調部から説明していきます。
その後、補足や理由を説明すると聞きやすい発表ができるでしょう。
適切な声のトーンや話すスピードに気を配る
緊張すると早口になりがちですが、スピードが速いと聞き取りにくく、逆に遅すぎると聞きづらくなる可能性があります。
適度な間をとりつつ、要所では聞き手の視線を確認して興味を引きつけるよう努めましょう。
発表者の熱意や姿勢は、発表内容の伝わり方に大きな影響を与えます。
ファシリテーター
ファシリテーターの役割は、グループ全体の話し合いをスムーズに進めることです。
司会進行の補助的な立場
司会進行役が時間や議題を管理する一方で、ファシリテーターは質問を投げかけたり、メンバー同士の意見を結びつけたりする役割があります。
発言のしやすい環境作り
たとえば「他に同じ意見の人はいますか?」や「違う意見を持つ方がいれば、ぜひ教えてください」など、メンバーが自由に意見を出し合える環境を整えます。
意見が偏らないように調整
特定のメンバーだけが発言している場合、他のメンバーにも意見を求め、全員が参加できる環境を作ります。
さまざまな意見を聞き出しまとめていくのが、ファシリテーターの重要な役割です。
論点の軌道修正
話し合いが感情的になったり、議題から脱線したりした場合には、冷静に状況を整理してもとの議題に戻すこともファシリテーターの役割です。
この際、メンバーの感情を尊重しつつ、対立を緩和するための中立的な視点が求められます。
ファシリテーターはグループの「潤滑油」のような存在です。
ファシリテーターが適切に機能することで、メンバー全員が活発に意見を交わし、グループの目標達成がよりスムーズになります。
まとめ
ケアマネ実務研修は、ケアマネジャーとしての知識と技術を学べる貴重な研修です。
事前課題や予習をしっかり行い、研修中のグループワークでは積極的に取り組むことで、実践的なスキルが習得できます。
また、研修で学んだ内容は今後の業務に直結し、利用者様にとって質の高いケアを提供する基盤となるでしょう。
ケアマネジャーの役割は、多職種との連携や利用者様・ご家族の支援など、介護現場で欠かせない存在です。今回の記事を参考にしながら、実務研修にしっかりと備えてください。
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