ケアマネジャーとして働いていると、誰もが一度は「辞めたい」と感じることがあるのではないでしょうか?利用者様やご家族に寄り添いながら支援していく上で、時には厳しい意見を伝える必要があります。また、様々な関係機関各所と利用者様との間の調整役を担うことで日々トラブルも絶えず起こります。
この記事では、現役ケアマネジャーが感じる仕事の大変さや体験談、ケアマネジャーを辞めた理由と退職する際の注意点、アドバイスを解説していきます。
ケアマネジャーとして働いていく上で、ぜひ参考にしてください。
目次
ケアマネジャーはどんな所が大変?苦労は?【体験談】
多職種連携に苦労した
ケアマネジャーは、チームの中心となり、一人の利用者様を支援するため、多職種連携が欠かせません。多職種連携の中で、医療職と福祉職では重要視する点が異なるため、お互い利用者様のためを思っていても支援が別々の方向に向いてしまうことがあります。そこをケアマネジャーが間に入り、調整しないといけないことが大変です。また、医療職同士、福祉職同士でも、価値観や制度の理解が異なることで事業所との連携が上手くいかず、苦労することもあります。
事務作業が多い
ケアマネジャー運営基準を満たすためにやるべき細かいことが多いのが大変です。毎月の実績入力、提供票の作成、サービス変更の度にサービス担当者会議を開催するというだけでも、アセスメント、ケアプランの評価、サービス事業所への連絡、主治医への意見を求める、ケアプランの作成、サービス担当者会議の開催など利用者様の直接的支援の裏で行っている事務作業がたくさんあります。また、ケアマネジャーは利用者様への説明責任があり、必ず「利用者様に説明した」という記録を確実に残さないといけないため、説明が抜けていないか確認するだけでも一苦労します。
更新研修が大変
資格の面で大変なことは、更新研修です。費用が高額で、給料と比べると割に合わないとよく聞きます。更新研修はかなりの時間を費やすため、勤務で行けない方は休みを利用して行かないといけないため大変です。最近は、ケアマネジャーが不足していることもあり、職場が費用を出してくれ、勤務内で研修に行ける事業所も増えているようです。
幅広い知識が求められる
介護保険制度は、シンプルではないので、自分の間違えた知識で、利用者様に不利益を与えないように常に勉強し続けないといけないです。そして3年に1回、制度改正があるため、その度に新しい知識を更新していく必要があります。また、ケアマネジャーは、介護保険だけ把握しておけばいいと思われがちですが、利用者様の生活を支援しているため、障がいサービスのことや生活保護制度、成年後見制度、疾患のこと等を幅広く知っておく必要があります。分からないことは調べたら良いのですが、どのような制度があるか、この場合はこの制度を使える等、利用者様に分かりやすく提示できるようにしておくために、日々自己研鑽に努めなければいけないところが大変です。
離れている家族やキーパーソンと連絡が取りにくい
利用者様が突然入院したなどという場合には、ご家族やキーパーソンの手続きが必要となってきます。そんな時に、ご家族やキーパーソンが遠くに住んでおり連絡がつかない場合には、入院の手続きや同意書など重要な書類の記入ができないこともあります。病院からも困ったような顔をされ、しばらくケアマネジャーが付き添い、夜遅くまでかかってしまったということもあると聞きます。
ケアマネジャーを退職した人はどんな理由で辞めた?
ケアマネジャーの仕事をしていて、トラブルの対応やクレーマーの対処などで「仕事を辞めたい」と感じる方は多いのではないでしょうか?それほど、精神的にきつい仕事となっています。実際に、介護職などからケアマネジャーの資格を頑張って取得し、ケアマネジャーになっても、半年から数年で介護職に戻る方も多くいます。では何故ケアマネジャーを辞めたのでしょうか?ここでは、辞めた理由を紹介していきます。
利用者様やご家族にクレーマーがいて大変だった
ケアマネジャーは、身体状況や、精神状況、ご家族や近隣住民との関係など、できる限り、担当利用者様の情報を知る必要があります。
訪問を何回か重ねていくうちに信頼関係を築いていきますが、時には難しいことを要求してくる利用者様やご家族がいます。
(例)
- 介護認定によって、利用できるサービスの量が決まっているが、もっとサービスを利用したいがために、介護認定区分を見直してほしい。
- サービスを利用することをしっかり説明しても、すぐに忘れたり伝わっていないことも多く、実際サービスを利用する日になり「聞いてない!」と言って怒り出す。
など、何十件も担当を持っているケアマネジャーが、クレーマーの対応に追われると、疲労困憊してしまいます。時間も取られるため、どうしても残業して仕事をするという結果になってしまうのです。
医療従事者とのコミュニケーションが上手くいかない
福祉の知識はあっても、医療の知識を隅々まで把握しているケアマネジャーは多くいません。そのことから、どうしても医療職(医師や看護師)とのコミュニケーションを難しく感じているケアマネジャーもいます。
利用者様の身体や薬に関することで、医師の指示が守れていなかった場合にはきつく言われることもあります。また、医療系のサービス(訪問看護やリハビリ)を利用する場合は、医師の指示が必要になってきますが、日々忙しい医師に頼みにくいということもあります。
ケアマネジャーが医師や看護師に意見を言いにくいと悩んでいる方も多いと聞きます。
担当件数を多く持っても給料が変わらなかった
ケアマネの担当件数は、39人もしくは44人(ICTの要件や事務職員の配置の要件を満たした場合)と限りがあります。上限ギリギリまで担当の件数を持っても、少ない場合でも給料に違いはありません。業務量は増えるのに、給料は変わらないので、「何でこんなに苦労して多くの件数を抱えているのだろうか」と仕事に嫌気がさすことがあると聞きます。
何でも屋だと思われ対応できなくなった
ケアマネジャーは、利用者様からすると無料でプランニングや訪問などしてくれるので「何でも屋」と勘違いする人がいます。
(例)
- 庭の草ひき(草取り)をしてほしい
- 片付けを手伝って欲しい
- 病院まで連れて行って欲しい
- 電球を変えてほしいなど
業務とは別の要望を突きつけられることもしばしばあります。利用者様に寄り添いたいという思いを持つケアマネジャーが、何でも言われたまま引き受けてしまうと業務が回らなくなり、仕事が溜まっていくという状況に陥りやすく、辞めたいと感じるようになってしまいます。
休みの日でも利用者様・ご家族・事業所から連絡がくるのが嫌だった
自身が休みでも、利用者様やご家族から連絡がくることもあります。
(例)
- 週末に怪我してしまって
- 来週のデイサービスおやすみしたい
- ガスの消し方が分からないから来てほしい
など、どうしても利用者様から一番頼りになり信頼されているケアマネジャーに連絡が来ることも多くあります。仕事とプライベートの線引きが難しく、しんどいと感じることもあると聞きます。また、事業所からの連絡として
(例)
- 家の鍵を無くして中に入れない
- 利用者が家からいなくなった などの問い合わせもあります。
独居の利用者の突然の死去に精神的に疲れた
昨日まで元気で、仲良くしていた利用者様が突然、家の中で亡くなっていまい、訪問した時に気づき、精神的にきつい状況であったと聞きます。そんな中で、警察や救急車、ご家族への連絡の対応に1日かかり、他の業務が全くできなかったということもあります。
利用者様とご家族の間で板挟み状態がしんどい
利用者様とご家族の間で意見が合わないことがしばしば見受けられます。そんな中で、どっちの味方もできないので、仲介に入り、双方にとってより良いプランを提案することはとても大変です。決まらない状況が続くと、時間もかかるしサービス利用にも繋げられないので焦ってしまったと聞きます。
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ケアマネ転職サポートに登録(完全無料)ケアマネジャーを辞めたいと思ったら確認しておきたいこと
実際に「辞めたい」と感じた場合には、どのようなことを確認し、行動して行けばよいでしょうか?現役ケアマネジャーに聞いた、実際に行動して効果があったことをまとめました。
ケアマネ同士で交流する
やはり、同じ状況や環境下で頑張っている同業種のケアマネと交流を持つことです。悩みの解決になることもあれば、より良い条件があることを知り、転職に踏み切れるかもしれません。研修や地域ケア会議などで出会ったケアマネジャーと交流を深めることで、学びやモチベーションアップに繋がります。辞めたいと思ったら「どうして辞めたいと思ったのか」を話を聞いてもらいながら
- 何がしたいのか
- 何で困っているのか。
- 給料や環境面で今の状況はどうなのか
を考えていく必要があります。
精神的なストレスがないかを確認する
ケアマネジャーは、精神的な負担の大きい仕事です。今、自身が置かれている辞めたいという感情は一時的なものなのか、ずっと感じているものなのかを判断する必要があります。
ケアマネジャーの仕事は、人と接するのが好き!話をするのが好き!各機関と調整し、人生のプランニングをすることにやりがいを感じるという方には向いていますが、そうでなければとてもストレスを感じ、メンタル不調や精神的ストレスなどで、うつになってしまうケアマネジャーの方もいると聞きます。
「朝起きるのが辛い」「食欲が無い」「誰とも会いたくない」など感じる場合は、一度リフレッシュの期間を設ける必要があるでしょう。
今後もケアマネジャーの仕事を続けたいかどうかを考え直す
ケアマネジャーは、福祉や医療系の経験を経て、資格を取得し仕事をしているという方がほとんどです。そんな中で、以前していた介護や看護の仕事の方が楽しかったと感じる方も多くいらっしゃいます。ケアマネジャーは、資格の更新制度がありますが、有効期限を過ぎても、再研修を受講し、再度ケアマネジャーの仕事に就くこともできます。
「今、自分がしたい仕事は何か」を考え、思いきって前の職種に戻るという選択も視野に入れても良いかもしれません。
ケアマネジャーを退職する際の注意点
引き継ぎをしっかり行う
突然「明日。辞めます」と言われると、職場や担当利用者様、各事業所などに多大な迷惑をかけることとなります。
辞める際には、最低でも2ヶ月前には上司に報告し、しっかりと引き継ぎをしていくことが大切です。利用者様1人1人、細かく個別の対応が必要なので、重要なポイントなどは引き継ぎメモなどに残しておくと、後任の人が確認し対応しやすくなるでしょう。
職場の就業規則を確認すると共に、どの時期に辞めるのがベストかを上司と相談できる環境があれば、一度相談してみても良いでしょう。
人は繋がっていると理解する
ケアマネジャーの業界は、ケアマネ同士の交流や研修、勉強会などが盛んに行われているため、同じ地域では顔見知りのケアマネジャーがいっぱいいます。また、多職種とのやり取りも多いため、事業所や病院の職員、行政とも繋がりがあります。
そんな中で、「あの事業所辞めたらしいよ」という噂もすぐに広がってしまうでしょう。
そこを理解した上で、転職する際は、各方面に挨拶すると共に、困らせるような辞め方はしないということが、次の転職時でも重要になってきます。
働きやすい職場に転職するためには、今の職場での規則を守って、後を濁さず辞めるということが大切です。
次の職場の面接に活かせるように、辞める理由を明確にしておく
福祉業界では、「どこに行っても同じ」と考えている方が結構いらっしゃいます。実際、転職回数も多く、色々な職場を見てきた人もそのようなことを口にします。
辞める理由が
- 嫌だから辞めた
- しんどいから辞めた
- 管理者と揉めた
- 給料が安かった
という理由だけでは、次に転職した際にも同じようなことを感じるようになってしまいます。
そうならないためにも、自分は、「何がしんどいと思ったのか?」「給料はどのくらい欲しくて、どんな手当があったら良いのか」「仕事が嫌だったのか人間関係が嫌だったのか」などを明確にしておく必要があります。
このことをしっかりと考えておくことで、次の転職先を探す際に自分が譲れないポイントや妥協できるポイントが絞れるため、見つけやすくなります。
また、就職時の面接でも「前の職場はどうして辞めたのですか?」という質問に答えやすくなります。
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ケアマネジャーの仕事を見直してみる
ケアマネジャーは働き方が色々あります。例えば、ケアマネジャーを取得し、研修を終えたら、介護が必要な方を調査する認定調査員の資格を取得することができます。居宅に属しているケアマネジャーや市の職員がやっている印象が強いですが、市から委託してもらい個人でやっている方もいらっしゃいます。
また、施設ケアマネという働き方もあります。
介護との兼務が多いですが、実際に利用者に関わりながらケアマネの仕事もできるので、やりがいがあります。事業所内での調整がほとんどなので、外部との連絡のやり取りや利用者様の家に訪問はほとんどありません。利用者様の介護をしながら、ケアプランも作成していきたいと考えている方には、施設ケアマネがおすすめです。
このようにケアマネの資格を持っている場合は、転職でも非常に有利になります。資格を活かしながら、やりたい仕事を見直してみましょう。
居宅介護支援事業所に見学にいく
当然ですが、事業所によって特色も待遇面も全く違います。残業がほとんど無い事業所もあれば、サービス残業ばかりの事業所もあります。休日も電話を取る事業所もあれば、休日は、電話対応なしの事業所もあります。こういった細かい待遇・職場のルールや、事業所内の雰囲気は実際に見学に行って質問しないと分からないことも多いです。転職する際には足を運んで見たり、知り合いのケアマネジャーから情報を仕入れ、調べていく必要があります。日頃から、「こんな方が働いているんだな」や「こんな風な特色があるんだな」など情報をキャッチしておくことが大切です。
体調を整えておく
身体がしんどいまま次の職場へいくと、身体的なストレスと精神的なストレスが両方やってきます。
そんな時は、辞める前に自身の体調を確認し、ストレスを減らした状態で転職に臨むほうが、気持ちも前向きに切り替わります。
今までやりたかったが時間が無くてできなかった趣味や習い事に挑戦しても良いですし、思いっきりいっぱい休むという選択もあります。
利用者様のプランの作成だけではなく、自分自身の人生プランも見直し、体調を整えていく必要があります。
良い条件で転職できるようにする
環境面や待遇面で不満がある場合は、転職を視野に入れる必要があります。そのためには、情報収集が非常に重要となってきます。
- 事業所内の雰囲気はどうか
- 通勤距離はどのくらいか
- 給料面はどうか
- 自宅からの距離
- 事業所の規模(異動がありそうか)
を判断しながら、自身にあった職場を探す必要があります。膨大な情報から、必要な情報をキャッチして行動して行くことは個人では難しいこともあるので、ぜひ一度転職エージェントにご相談ください。
まとめ
ケアマネジャーとして働くことは、やりがい以上に責任の重さから苦労を感じている方も多くいます。ケアマネジャーとして働いていく上で、何が壁となっているのかを明確にしていく必要があります。主に、待遇面や職場内の人間関係に壁を感じている方は、より良い環境に思い切って変えてみるという選択もあります。
「辞めたい」と感じながら辛い毎日を過ごし、体調を崩すということにならないように、日頃から情報を仕入れ転職するということも大切です。
「なかなか情報を得ることが難しく、転職に踏み切れない」という方は、専任アドバイザーがサポートしてくれる転職支援サービスがおすすめです。
過去の経験からの情報が豊富にあるため、自身にマッチした職場が見つけやすくなります。 一人での転職活動が不安な人はぜひ1度相談してみましょう!