「三福祉士」と呼ばれる国家資格の中でも、特に精神保健分野に特化しているのが精神保健福祉士です。
精神保健福祉士を目指すために大きな関門となる国家試験。
今年度行われる第27回精神保健福祉士国家試験では、新カリキュラム変更後はじめての国家試験となります。
過去試験の合格率や合格基準点に加え、新旧カリキュラムの変更点についてもご紹介します。
目次
第27回 精神保健福祉士国家試験の概要
現在発表されている、2024年度第27回精神保健福祉士国家試験の概要をまとめました。
試験日・時間
第27回精神保健福祉士国家試験の試験日時は、以下の通りです。
試験日 | 令和7年2月1日(土) | 令和7年2月2日(日) |
試験時間 | 午後(専門科目) 14時00分~15時30分※ | 午前(社会福祉士との共通科目) 10時00分~12時20分※ |
※弱視等受験者の試験時間は1.3倍、点字等受験者の試験時間は1.5倍
出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第27回精神保健福祉士国家試験 受験の手引き(一部抜粋版)」
弱視等受験者、点字等受験者の試験時間は、別途申請により「障害のある方等の受験上の配慮」が認められた場合の時間となります。
すでに社会福祉士として登録されている場合、受験申込時に申請をしておくことで2日目の共通科目が免除となります。
試験科目・内容
試験科目は、以下の通りです。
専門科目 | 共通科目 | |
---|---|---|
試験科目 | ①精神医学と精神医療 ②現代の精神保健の課題と支援 ③精神保健福祉の原理 ④ソーシャルワークの理論と方法(専門) ⑤精神障害リハビリテーション論 ⑥精神保健福祉制度論 | ①医学概論 ②心理学と心理的支援 ③社会学と社会システム ④社会福祉の原理と政策 ⑤社会保障 ⑥権利擁護を支える法制度 ⑦地域福祉と包括的支援体制 ⑧障害者福祉 ⑨刑事司法と福祉 ⑩ソーシャルワークの基盤と専門職 ⑪ソーシャルワークの理論と方法⑫社会福祉調査の基礎 |
問題数 | 計48問 | 計84問 |
出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第27回精神保健福祉士国家試験 受験の手引き(一部抜粋版)」
専門科目6科目、共通科目12科目の計18科目の試験になります。
試験会場
第27回精神保健福祉士国家試験の試験地は、以下の7カ所になります。
- 北海道
- 宮城県
- 東京都
- 愛知県
- 大阪府
- 広島県
- 福岡県
試験会場の詳細については、12月6日発送の受験票に記載されています。
余裕を持って到着ができるよう、アクセス方法は入念にチェックしておきましょう。
受験資格
精神保健福祉士国家試験の受験資格を得る方法は、全部で11パターンあります。
大きく分けると、以下の5つです。
- 大学、大学院または4年制専門学校で「指定科目」を修めて卒業した方
- 3年制短期大学等で「指定科目」を修めて卒業した後、指定施設において相談援助業務の実務経験が1年以上ある方
- 2年制短期大学等で「指定科目」を修めて卒業した後、指定施設において相談援助業務の実務経験が2年以上ある方
- 必要な条件を満たした上で、精神保健福祉士短期養成施設、一般養成施設を卒業した方
- 過去に精神保健福祉士国家試験の受験票が交付され、受験資格が確定している方
それぞれの詳細については、社会福祉振興・試験センターのホームページでご確認ください。
受験手数料
第27回精神保健福祉士国家試験の受験手数料は、以下の通りです。
- 24,140円
(精神保健福祉士のみ受験する場合) - 36,360円
(精神保健福祉士と社会福祉士を同時に受験する場合) - 18,820円
(精神保健福祉士の共通科目免除により受験する場合)
出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験」
社会福祉士と比較すると、少し高めの金額となっています。
受験申込受付期間
第27回精神保健福祉士国家試験の受験申込受付期間は、以下の通りです。
申込期間:令和6年9月5日(木)~10月4日(金)
申込における手続き方法や各種書類をまとめた「受験の手引き」を手に入れるには、社会福祉振興・試験センターへの申込が必要です。
必要書類の準備や受験料の支払いなど、受験申込には思った以上に手間と時間がかかります。
期限が迫ってあわてないよう、早めの準備を心がけましょう。
合格発表
第27回精神保健福祉士国家試験の合格発表は、以下の日程で予定されています。
合格発表日:令和7年3月4日(火)
発表は公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページに、合格者の受験番号が掲載されます。
令和7年3月7日(金)には、受験者のもとへ結果通知が郵送されます。
国家試験に合格しても精神保健福祉士登録をしておかなければ、名称を使用することはできません。合格後は忘れずに登録を行いましょう。
合格率
精神保健福祉士国家試験の合格率は、おおよそ60%です。
社会福祉士国家試験の合格率がおよそ30%といわれていることと比較すると、2倍近い差があります。
近年の合格率は70%ほどに増加していますが、新カリキュラム変更前の駆け込み受験が増えていることも一因と思われます。
実施回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第26回 | 6,978人 | 4,911人 | 70.4% |
第25回 | 7,024人 | 4,996人 | 71.1% |
第24回 | 6,502人 | 4,267人 | 65.6% |
第23回 | 6,165人 | 3,955人 | 64.2% |
第22回 | 6,633人 | 4,119人 | 62.1% |
出典:厚生労働省「第26回精神保健福祉士国家試験合格結果を公表します」
合格基準点
精神保健福祉士国家試験に合格するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の方
- 1を満たした方のうち、以下の9科目群の各科目群すべてにおいて得点があった方
- 精神医学と精神医療
- 現代の精神保健の課題と支援
- 精神保健福祉の原理
- ソーシャルワークの理論と方法(専門)
- 精神障害リハビリテーション論、精神保健福祉制度論
- 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム
- 社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度
- 地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉
- ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎
出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験受験の手引き 出題基準・合格基準」
第27回精神保健福祉士国家試験は、132点満点の試験となります。
よって、60%程度の目安としておよそ80点の獲得と、各科目群すべてにおいて点数を獲得することが合格の基準となります。
過去の精神保健福祉士国家試験における合格率や基準点
過去の精神保健福祉士国家試験での合格点、基準点は以下の通りです。
実施回 | 合格率(%) | 合格基準点 |
---|---|---|
第26回 | 70.4% | 95点 (総得点58%) |
第25回 | 71.1% | 95点 (総得点58%) |
第24回 | 65.6% | 101点 (総得点61%) |
第23回 | 64.2% | 94点 (総得点58%) |
第22回 | 62.1% | 90点 (総得点55%) |
第22回から26回精神保健福祉士国家試験では問題数が163問あったため、第27回での問題数と比較すると合格点は高めに感じられますが、総得点からのパーセンテージからみればおおよそ60%に近い数値となっています。
第27回から問題数が少なくなり、1点の違いが大きな差となります。
各科目群ごとでの得点も取りこぼせないため、問題の意図をしっかりと理解し、うっかりミスをしないよう注意しましょう。
精神保健福祉士国家試験は過去にもカリキュラムの変更がありましたが、合格率の大きな変動はありませんでした。
出題方法が変わっても精神保健分野という枠組みの中で、学ぶべきことは大きく変わりません。基本的なことはもちろん、応用的な問題にも対応できるようにしておきましょう。
精神保健福祉士国家試験の難易度は?
精神保健福祉士国家試験の合格率はおよそ60%以上と、同じ福祉系の国家資格である社会福祉士がおよそ30%程度であることを考えると比較的合格しやすい資格ともいえます。
しかしながら社会福祉士と同時受験する場合や、すでに社会福祉士資格を保有している場合には共通科目が免除されるなど、単純に合格率だけでの比較では難易度が図り切れない要素も含まれています。
幅広い分野について深く学んでおく必要がある共通科目と、精神保健分野と関わるさまざまな他分野との応用的知識を含めた専門科目のどちらもしっかりと身に着けておく必要があります。
過去問を繰り返し解くことで出題形式の傾向を把握するとともに、各分野の基本的な性質を理解し、応用問題にも対応できるようにしておきましょう。
精神保健福祉士国家試験の勉強方法
精神保健福祉士国家試験に合格するためには、およそ2時間から5時間の学習を約半年継続する必要があると言われています。
個人差もありますが、大切なことは継続です。無理なく続けられるよう、計画を立てて臨むようにしましょう。
精神保健福祉士国家試験の代表的な勉強方法をご紹介します。
過去問を解く
これまでに行われた精神保健福祉士国家試験の過去問を用いて学ぶ方法です。
過去問を解くことで出題形式を把握することができ、国家試験で戸惑うことが少なくなります。
また実際の試験時間を踏まえて行うことで、一問あたりにかけられる時間や、科目における時間配分をシミュレーションすることができます。
苦手な科目に集中して取り組んだり、間違えたポイントを踏まえて学び直すこともよいでしょう。
一日で取り組む問題数も最初は少なく、徐々に増やしていくことで継続しやすくなります。
社会福祉振興・試験センターのホームページにも過去問が掲載されているため、まずはどれだけのボリュームがあるか目を通してみましょう。
模擬問題を解く
模擬問題には、これまでの出題傾向や制度改正に応じた問題が示されています。
過去問の内容から分析された問題が出題されているため、より国家試験に近い学習教材と言えるでしょう。
各出版社から販売されている模擬問題集に取り組む方法や、国家試験に即した時間配分で行われる模擬試験を受けることも効果的です。
模擬試験は実施会場や費用もさまざまで、昨今ではオンラインで受験できるものもあります。
模擬試験の点数に左右されず、あくまで国家試験に向けての対策と捉えましょう。
対策講座を受講する
精神保健福祉士国家試験に向けた対策講座を受講する方法です。
最近ではEラーニングでの対策講座が普及しており、インターネット環境さえあれば受講しやすくなっています。
会場での実施もあるため、自分に合ったものを選びましょう。
実施方法も短期間集中型や、模擬試験を含めたものなどさまざまなバリエーションがあります。
対策講座はコストがかかりますが、決められた時間の中で行われるため独学よりも集中しやすいことがメリットです。他の勉強方法と組み合わせることも効果的です。
新カリキュラムでの精神保健福祉士国家試験の変更点
第27回精神保健福祉士国家試験からの変更点をご紹介します。
ポイントをきちんと押さえて、受験対策に役立てましょう。
新専門科目の創設
新カリキュラムでは、新しい科目である「精神保健福祉の原理」が創設されました。
精神保健福祉の原理
精神保健福祉士養成の中核を成す科目として、精神保健分野でより活動・実践ができる人材育成のための科目となっています。
精神保健福祉における理念や視点、関係性などの基本的な枠組みを習得することで、精神障害者の基本的人権の保障、社会正義の実現を目的とした専門職である精神保健福祉士の存在意義や役割について学ぶ科目となります。
精神保健福祉の原理における科目内項目は、以下の通りです。
- 障害者福祉の理念
- 「障害」と「障害者」の概念
- 社会的排除と社会的障壁
- 精神障害者の生活実態
- 「精神保健福祉士」の資格化の経緯と精神保健福祉の原理と理念
- 「精神保健福祉士」の機能と役割
出典:社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験 科目別出題基準」
新共通科目の創設
社会福祉士との共通科目においても、新たな科目が2つ創設されました。
刑事司法と福祉
ひとつ目が「刑事司法と福祉」です。
司法と福祉の連携の促進や、刑事司法手続きの各段階における犯罪者、犯罪被害者の福祉ニーズの把握と支援を担う専門職として、精神保健福祉士に求められる生活支援や精神保健上の支援について問われる科目です。
- 刑事法における近年の動向とこれを取り巻く社会環境
- 刑事司法
- 少年司法
- 更生保護制度
- 医療観察制度
- 犯罪被害者支援
出典:社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験 科目別出題基準」
地域福祉と包括的支援体制
ふたつ目が「地域福祉と包括的支援体制」です。
地域福祉の仕組みや展開過程、福祉行財政などの知識を基礎とし、地域共生社会を実現するために精神保健福祉士が担う役割について問われる科目になります。
- 地域福祉の基本的な考え方
- 福祉行財政システム
- 福祉計画の意義と種類、策定と運用
- 地域社会の変化と多様化、複雑化した地域生活課題
- 地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制
- 地域共生社会の実現に向けた多機関協働
- 災害時における総合的かつ包括的な支援体制
- 地域福祉と包括的支援隊の課題と展望
出典:社会福祉振興・試験センター「精神保健福祉士国家試験 科目別出題基準」
科目の再構築
時代の変化に伴う精神保健福祉分野の拡大に合わせ、旧カリキュラムにおける科目の一部を再構築し、幅広いニーズに対応できる知識を身につけるための再構築が行われました。
「低所得者に対する支援と生活保護制度」が「社会保障」「精神保健福祉制度論」「ソーシャルワーク演習」に、「保健医療サービス」が「社会保障」「精神医学と精神医療」「ソーシャルワークの理論と方法」へと変更となっています。
養成過程における科目の再構築
より実践的な精神保健福祉士を育成するため、これまでの科目編成からさらにソーシャルワーク技術を重視した科目となりました。
具体的には「精神保健福祉相談援助の基盤(基礎)」が「ソーシャルワークの基盤と専門職」に、「精神保健福祉援助演習(基礎)」が「ソーシャルワーク演習」として社会福祉士カリキュラムと共通化され、「精神保健福祉相談援助の基盤(専門)」「精神保健福祉の理論と相談援助の展開」が「精神保健福祉の原理」「ソーシャルワークの理論と方法」「精神障害リハビリテーション論」に再構築されました。
実習施設の範囲の見直し
精神保健福祉分野における社会的ニーズの高まりから、これまでの専門的な実習施設だけでなく、社会福祉協議会や教育機関、地域包括支援センターなどが新たな実習先に加わりました。
それに伴い、精神保健福祉士国家試験における実務経験として認められる施設も拡充されています。
まとめ
第27回精神保健福祉士国家試験から始まる、新たなカリキュラムについて解説しました。
これまで精神保健福祉士は精神保健分野に特化した資格とされていましたが、メンタルヘルスやスクールソーシャルワークなど、精神障害だけでない幅広いニーズが求められるようになりました。
日本精神保健福祉士協会が、2020年にPSWの名称をMHSW(メンタルヘルスソーシャルワーカー)に変更したことからも、社会的なニーズの拡がりが窺えます。
今後さらに需要が高まるであろう精神保健福祉士ですが、国家試験は一筋縄ではいきません。
新カリキュラムの変更によって国家試験も変化していますが、対策講座や模擬試験など十分な対策をしておけば安心して挑むことができるでしょう。
精神保健福祉士取得後、新たなステップアップについても対策が必要です。
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