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「ケアマネジャーの資格取得後はすぐに働くべき?」
「数年後に働くキャリアプランの場合、デメリットはある?」
ケアマネ資格を取得した後、いつから働き始めるべきか迷っていませんか?
ケアマネは、多くの専門知識やスキルが求められる仕事で、働き始めるタイミングによって、その後のキャリアにも影響を与えます。
本記事では、ケアマネのキャリアスタートの時期について、メリットとデメリットを解説しています。
あなたに合ったキャリアパスを見つけるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
資格取得後、ケアマネジャーとして働き始める時期はいつがいい?
ケアマネの受験は、毎年10月に行われます。
11月下旬~12月上旬の合格発表後に介護支援専門員実務研修を修了し、資格証の交付申請して、資格証が手元に届いてから初めてケアマネとして働けるのです。
そのため、業務に入れるのは合格発表から半年程経過した5~6月あたりが目安となります。
資格取得後は、すぐにケアマネとして働き始めることをおすすめしますが、未経験のため悩む方も多いでしょう。
「すぐに働く」「期間をおいて働く」それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
すぐにケアマネジャーとして働く場合
すぐにケアマネとして働く場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット1:試験や研修で吸収した知識をすぐに生かせる
ケアマネの受験は合格率20%を下回ることもあり、難しい試験といわれています。
そのため試験前後には、受験勉強して多くの知識を身につけていることでしょう。
ケアマネは、多くの専門職をマネジメントする職種です。
試験勉強で身につけた知識はすぐに生かせるため、各専門職だけでなく、利用者様やご家族にとっても安心感を与えられる強みになるでしょう。
メリット2:少しでも早くスタートすることで転職の場合は有利になる
資格を取得したら、できるだけ早くキャリアをスタートさせることがおすすめです。
今後の転職を考えると、ケアマネとしての経験を、より早く積むことで実務の面でも有利になるケースがあります。
多くの経験は、問題解決能力やコミュニケーション能力が向上し、自分自身が成長する機会を多く得られます。
さらに、将来的に主任ケアマネを目指す場合には、5年間の実務経験が必要です。
早く仕事を始めることで、その目標にも近づけるのです。
デメリット:基礎資格の経験年数や役割によって、ケアマネ業務に生かせない可能性も
ケアマネの資格取得には、「規定の国家資格※1」または「相談援助業務経験※2」の実務経験が必要です。
介護福祉士なら資格取得後に5年間の実務経験を経て、ケアマネの受験資格を得られます。
これまで働いてきた業務経験やスキルが生かせないと感じる方も多いでしょう。
例えば、介護福祉士の場合、おむつ交換や入浴介助などの身体介護や掃除などの生活支援は、ケアマネで行うことはほとんどありません。
面談やケアプランの作成など、介護現場ではあまりすることのなかった業務が増えるため、戸惑うこともあるでしょう。
実際に従事したことのない事業所形態についても、運営の実態や利用方法を知らない方も多い傾向です。
不安が大きい場合は、経験のない事業所形態(施設や居宅)を体験するのもひとつの手段といえます。
※1:医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士(管理栄養士含む)・精神保健福祉士
※2:生活相談員・支援相談員・相談支援専門員・主任相談支援員
取得後、数年経過してからケアマネジャーとして働く場合
次に、ケアマネ資格を取得後、数年経過してから働く場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット:現在の職種でしっかりキャリアが形成できている場合、年収が維持できる
資格を取得してもすぐにケアマネとして働かず、現在の職種でキャリアを積み重ねることで、年収の維持や安定した収入が見込める場合があります。
近年は、介護職員の処遇改善が見直され、ケアマネの年収以上の収入が見込まれるケースも珍しくありません。
また、医療職では高水準な年収が設定されている場合も多いため、ケアマネへの転職はよく検討すると良いでしょう。
各職種の平均年数を以下の表にまとめたので、参考にしてみてください。
職種 | 年収 |
---|---|
ケアマネジャー | 421.6万円 |
介護福祉士 | 371.4万円 |
看護師 | 508.2万円 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 432.5万円 |
管理栄養士 | 390.2万円 |
生活相談員 | 425.8万円 |
薬剤師 | 577.9万円 |
出典:厚生労働省「jobtag」(令和6年10月1日時点)
今の仕事で評価を受け、昇給や昇進を経験しているのであれば、年収が一定水準以上であることがメリットとなります。
現在の職場で得た専門知識やスキルも貴重な財産となり、ケアマネとしてのキャリアスタート時に役立つでしょう。
デメリット1:研修等で得た知識、感覚を忘れてしまう
ケアマネとしてすぐに働かない場合、介護支援専門員実務研修や資格取得時に身につけた知識や感覚を時間とともに忘れてしまう可能性があります。
ケアプランの作成やサービス事業所との連携といった実務的なスキルは、座学だけでは十分に習得できない部分も多く、現場での経験が重要です。
時間が経つことで、再度知識の習得が必要になり、スムーズなキャリアスタートに時間がかかる可能性がある点は理解しておきましょう。
デメリット2:新制度への法改正があると、知識のアップデートが必要
介護保険法は3年に1度(適宜見直しが入るため、数ヶ月の場合もあり)見直しされるため、新しい知識を学び直す必要が出てくるでしょう。
そのため、資格取得後すぐに働き始めるよりも負担が増える可能性があります。
最新の情報に追いつくためには、研修やセミナーを受講するなど、自己学習が欠かせません。
デメリット3:今よりも年齢が高くなり、ケアマネ転職のハードルが上がる
資格取得から数年が経過すると、その間に自身の年齢が上がり、新しいキャリアに挑戦する際に不安やプレッシャーを感じることがあります。
特に、年齢を重ねることで、体力的な負担や学び直しに対する心理的なハードルが高くなることもあるでしょう。
ケアマネの仕事は体力だけでなく、柔軟な対応や最新の知識が求められるため、これまでのキャリアが長くなればなるほど、新しい分野への挑戦が精神的に重く感じられるかもしれません。
資格取得後のケアマネジャーのキャリアスタート事例・体験談
資格取得後にケアマネのキャリアをスタートした先輩たちは、どのような経験をしているのか見ていきましょう。
ケアマネジャーとして働き始めたきっかけ
ケアマネとして働き始めるには、それぞれきっかけが違うようです。
ここでは、先輩ケアマネが働きだしたきっかけとなる理由を紹介します。
介護職のキャリアップ目的のため
介護職からキャリアをスタートしている方の多くは、キャリアアップのひとつとしてケアマネになる方が多い傾向です。
数年前までは、介護福祉士からの上位資格がなく、収入を上げる手段としてケアマネを目指す方も多かったのです。
現在では、介護職員処遇改善の影響により、ケアマネよりも収入が高い介護職員も増えましたが、以前は選択肢がなく、ケアマネが選ばれていました。
職場のケアマネ退職により業務を引き継ぐため
同じ事業所で働くケアマネが退職することにより、資格を所持している職員がケアマネのポジションにつくこともあります。
施設では、職員の配置基準から、利用者数に合わせたケアマネの配置義務があり、違反すると報酬の減算や運営の休止に繋がるリスクがあります。
また、ケアマネ業務は資格が必須となるため、所持している職員が選定され、そのまま施設ケアマネになっているケースも珍しくありません。
上司からの推薦を受けたため
ケアマネは専門性の高い職種で、コミュニケーション力やタスク管理能力が必要とされます。
つまり、資格を持っていても誰でもこなせる職種ではないということです。
また、施設では少人数しか配置されていない場合も多く、フォローのされにくい職種といえます。
そのため、上司から評価を受け、ケアマネのキャリアをスタートさせたという方も多いようです。
ケアマネジャーのキャリアスタート成功事例
ケアマネとしてのキャリアをスタートさせるにあたり、先輩ケアマネの成功事例をみていきましょう。
①夜勤がなくなり、生活リズムが整った
ケアマネは基本的に夜勤がなく、日中の勤務がほとんどです。
一方、介護職は月に数回夜勤や早出・遅出といった変則勤務がしんどいと感じている方も多いでしょう。
年齢を重ねると、特に身体の不調が現れやすく、疲れを蓄積してしまうこともあります。
しかし、ケアマネになり、生活リズムが整うと体調が良くなったと感じている人は多い傾向です。
また、子どもが小さい間は、夜勤をしたくないと考えている場合も、ケアマネとして働くことで子どもとの時間を確保できているようです。
②前職の経験が、インテークや相談時に役立った
相談員の実務経験があると、利用者様やご家族とのインテーク(初回面談)や相談をお受けた際に「抵抗なく対応できた。」という声もあります。
相談員もケアマネも大きくグループ分けすると、相談援助職といえるでしょう。
そのため、コミュニケーションスキルやタスク管理能力をそのまま生かし、スムーズにキャリアをスタートさせられたのです。
ケアマネジャーのキャリアスタート失敗事例
ケアマネとしてキャリアをスタートしたものの、「大変だった」と感じた先輩ケアマネの事例を2つ紹介します。
引継ぎもなく、30人以上の利用者様を担当
先輩ケアマネが体験した、ケアマネ業務の引継ぎに関して、以下のような事例をご紹介します。
ケアマネの資格を取得して、未経験のまま居宅介護事業所に転職しましたが、前任者はすでに退職しており、利用者に関する引き継ぎが一切ありませんでした。
新人ケアマネなのに、引継ぎなしで、いきなり30人以上の利用者を把握するのは困難です。
幸い、他のケアマネがいるため、質問しながらなんとか業務をこなしていますが、正直困っています。
事業所によっては人手不足で運営しているところも多く、前任者の急な退職により、引継ぎがほとんどないケースも少なくありません。
また、前任者がトラブルで退職した場合、引き継ぎどころか尻ぬぐいからスタートすることさえあるため、転職の際には、引継ぎの有無や期間について確認しておくと良いでしょう。
想像以上に仕事量が多く自信喪失
次のような声もありました。
苦労の末にケアマネの資格を取得し、訪問介護から特別養護老人ホームのケアマネに転職しました。でも、実際に仕事をしてみると想像以上に大変です。
介護職のときよりも、はるかに多くの知識が必要で、複数の利用者に気を配らなければならず、介護スタッフへの配慮も欠かせません。毎日、疲れ切ってしまい、この先やっていける自信がなくなった。
ケアマネは、担当する利用者の数も数十人に上ることが一般的です。
サービスの種類や保険制度、費用など、幅広い知識が必要で、多様なニーズに対応するのが難しいと感じるかもしれません。
前職とは求められるスキルが異なるため、慣れるまでは大きな負担を感じる場合もあるでしょう。
しかし、ケアマネの仕事は介護職と比べると体力的には少し楽なはずです。
基本的に夜勤もなく、年齢を重ねて体力が落ちたとしても続けやすい仕事といえるでしょう。
ケアマネジャーのキャリアパス紹介
ケアマネの資格を取得した後は、経験を積むことでより高度な専門性を発揮し、キャリアアップを図ることが可能です。
ここでは、ケアマネとしての代表的なキャリアパスについて紹介します。
キャリアパス1:ケアマネジャー → 主任ケアマネジャー
ケアマネとして5年の実務経験を積むと、次のステップとして「主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)」を目指せます。
主任ケアマネは、ケアマネの教育や指導にも関わるため、後輩育成やチーム全体のケアの質を高める責任があるポジションです。
自らのスキルをさらに深め、介護支援のリーダーとして成長できるキャリアパスと言えるでしょう。
主任ケアマネになるためには、指定された研修を受ける必要があります。
また、居宅介護支援事業所で管理職をする場合は必須の資格となるため、5年のキャリアを積んだ際には、取得しておくとよいでしょう。
キャリアパス2:ケアマネジャー → 施設管理者
ケアマネとしての経験を積んだ後、さらに上のキャリアを目指す場合、介護施設の管理者として働く選択肢もあります。
管理者は、施設全体の運営を担当し、ケアマネや介護スタッフ、看護師などの職員を統括し、円滑に業務が進むように調整するポジションです。
また、予算管理や職員の教育、施設の品質向上にも責任を持つことになるため、経営的な視点やマネジメントスキルが求められます。
管理者としての責務は大きいですが、その分やりがいや達成感も大きく、施設の成長に貢献できる重要なポジションです。
ケアマネとして働いた経験を生かし、施設全体を支えるリーダーシップを発揮できるため、さらなるキャリアアップを目指したい方に適したキャリアパスといえるでしょう。
まとめ
ケアマネの資格を取得した後、早く仕事を始めるべきか、それとも期間を置くべきかは、あなたの現在のキャリア状況や目指すキャリアパスによって異なります。
すぐに実務をスタートさせることで、得られる成長の機会や経験の積み重ねは貴重なものですが、準備不足や現場の負担が大きく感じられることもあるでしょう。
一方で、現在の仕事で、しっかりキャリアを形成しつつ、新しい知識や制度の変化に対応するために、じっくり準備する選択肢もあります。
今後ケアマネとして長く働くのであれば、早めに経験を積み、主任ケアマネを目指していく選択肢がおすすめです。
主任ケアマネを取得することで、居宅介護支援事業所の管理者への道も開かれます。
成功するキャリアを築くために、自分に合ったタイミングを考えてみてはいかがでしょうか。