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ケアマネジャーの資格を取得したものの、次のステップに不安を感じ、一歩を踏み出せない方は少なくないでしょう。
ケアマネジャーは、介護保険を利用する方が、安心してサービスを利用できるようにするための大切な役割を担っています。
しかし、具体的な仕事内容ややりがいについてまだ理解できていないという方もいるでしょう。
そこで本記事では、ケアマネジャーとして働くメリット・デメリットについてわかりやすく解説するとともに、仕事内容や活躍できる職場についても紹介しています。
今後のキャリアについて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
ケアマネジャーはこんな人が向いている
ケアマネジャーの仕事は、介護保険や介護に関する知識があればできるというわけではありません。
具体的には、以下のような人がケアマネジャーに向いていると言えます。
- コミュニケーション能力が高い人
- 問題解決能力が高い人
- 事務処理能力の高い人
- 学習意欲の高い人
ご利用者がよりよい生活を送るためには、その方が何に困っていて、どのような生活を送りたいと思っているかなどを知る必要があります。
そのため、関係する多職種とコミュニケーションをとりながら仕事をすすめていきます。
ですので、周囲と円滑にコミュニケーションをとれる能力が必要です。
また、把握した生活課題をどうすれば解決できるのか、優先順位を考え実行する力も求められるでしょう。
さらに、ケアプラン作成のための帳票類の作成や介護保険請求のための事務処理能力も必要です。
これに加えて、学習意欲が高い人もケアマネジャーに向いています。
介護保険制度やその他の制度は定期的に改正されます。
利用できるサービスが変更されることもあるため、最新の情報を学び続ける姿勢が大切です。
ケアマネジャーとして働くメリット
ケアマネジャーとして働くと、以下のようなメリットがあります。
- 専門性の向上を期待できる
- キャリアアップを見込める
- 柔軟な働き方ができる
- 身体的な負担を軽減できる
それでは、一つずつ解説していきます。
専門性の向上を期待できる
ケアマネジャーの仕事は介護保険制度だけでなく、医療、福祉などの分野や、行政との関わりなど、多岐にわたる専門知識が求められる仕事です。
そのため、日々の業務をこなしていくうちに、自然と専門性を高められるようになります。
例えば、ケアプランの作成においては、以下のような一連のプロセスがあります。
- インテーク
- アセスメント
- ケアプラン原案の立案
- サービス担当者会議
- モニタリング
これらの業務をおこなうためには、関係各所と連絡調整をとる必要があります。
多くの職種との関わりや実践のなかで、ケアマネジメント能力を総合的に養うことができるでしょう。
また、専門性を高めるための支援体制が充実している職場も少なくありません。
例えば、外部の研修への参加費補助や、資格取得のための支援制度などを導入している職場もあります。
キャリアアップを見込める
ケアマネジャーとして経験を積むと、居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャーや介護施設の施設長など、管理職へのキャリアアップが見込めます。
キャリアアップできれば、収入アップにもつながり、より働きやすい環境を作れます。
他にも、地域包括支援センターや行政機関など、福祉分野のなかでもさまざまな場所で活躍できるでしょう。
また、専門性を深め、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を取得することで、医療ソーシャルワーカーやケースワーカーなど、より高度な業務に携わることも可能です。
さらに、将来的に独立し、コンサルティングや研修講師など、外部の仕事にチャレンジする人もいます。
柔軟な働き方ができる
ケアマネジャーの仕事は、ケアプランの作成をはじめとするデスクワークが中心であり、夜勤はなく、日勤がほとんどのため、安定したシフトで勤務しやすいと考えられます。
ご利用者の自宅を訪問したり、関係機関との連携を取ったりすることはあるものの、テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方ができる職場も増えています。
雇用形態の面でも、パートタイムや契約社員など、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選べる場合もあるでしょう。
育児や介護と両立したい人や、ワークライフバランスを重視したい人にとって、自分に合った働き方ができる職種といえます。
身体的負担を軽減できる
ケアマネジャーの仕事は、基本的に日勤帯の勤務のため、毎日の就寝・起床時間が一定になり、生活リズムを整えやすくなります。
一方、施設で介護職員として働いていると、早番、日勤、遅番、夜勤などのシフト勤務になることが一般的です。
そのため、不規則なシフトに合わせて就寝時間や起床時間を調整しなければならず、身体的負担が大きくなります。
ケアマネジャーとして働くことで、規則的な生活リズムを維持できるようになり、身体的な負担を軽減できるでしょう。
ケアマネジャーとして働くデメリット
ケアマネジャーは、高い専門性とコミュニケーション能力が求められるやりがいのある仕事ですが、一方でデメリットも存在します。
ここでは、ケアマネジャーとして働くうえで直面する以下のデメリットについて解説します。
- 資格の更新に時間と費用がかかる
- 精神的・身体的負担がある
- 緊急対応を求められることがある
それでは、一つずつ解説していきます。
資格の更新に時間と費用がかかる
ケアマネジャーの資格は5年ごとに更新しなければならず、更新しない場合はケアマネジャーとして業務を続けることはできません。
資格を更新するには、初回は88時間、2回目以降は最低32時間以上の法定研修を受講する必要があります。
この研修を受けるためには、仕事を休まなければならず、費用も3万円前後※かかります。
※更新研修の費用は、都道府県や実務経験の有無によって異なるため、実際に研修を受ける際は、各実施団体に確認が必要です。
そのため、業務の進捗や収入面に大きく影響する場合もあるでしょう。
法定研修を業務扱いにしてくれる職場もありますが、自身の休日で受講しなければならないこともあります。
研修費用の面でも、自己負担になってしまう職場も少なくありません。
そのため、資格維持のためにかかる時間と費用はケアマネジャーとして働く際のデメリットと言えます。
精神的・身体的負担がある
ケアマネジャーの仕事は、利用者や家族との密接なコミュニケーション、多職種との連携調整など、高度な対人スキルを要する場面があります。
そのため、精神的なストレスが蓄積しやすい仕事と言えるでしょう。
特に、困難事例や家族間の意見の相違している状況などに直面した際は、大きな心理的負担を感じることがあります。
また、利用者宅への訪問や関係機関との打ち合わせなど、外出の機会も多いため、身体的な疲労も無視できません。
膨大な書類作成や事務作業、デスクワークによる肩こりや目の疲れなども懸念されます。
このような心身両面での負担は、長期的には体調不良のリスクにもつながる可能性があり、ケアマネジャーにとって重要な課題の一つとなっています。
緊急対応を求められることがある
ケアマネジャーの仕事は、利用者の生活に直結しているため、予期せぬ緊急事態への対応が発生することがあります。
例えば、利用者の急な体調変化や事故、家族からの緊急の相談などがあると、休日や夜間であっても即座に対応しなければならない事もあります。
このような状況では、迅速かつ適切な判断が求められ、大きなプレッシャーを感じることもあるでしょう。
また、緊急対応のためにプライベートな時間を割かなければならないと、ワークライフバランスの維持が難しくなる場合があります。
緊急対応はいつ連絡がくるかわからないため、心理的な負担も大きくなります。
このように、予測不可能な事態への対応は、ケアマネジャーの仕事における大きなストレス要因の一つとなっています。
ケアマネジャーの仕事内容
ケアマネジャーの仕事は多岐にわたります。
主な業務は以下の3つに分類され、それぞれが密接に関連しながら、質の高い介護サービスの提供を支えています。
- ケアマネジメント
- 介護保険の給付管理
- 認定調査
一つずつ解説していきます。
ケアマネジメント
ケアマネジメントとは、ご利用者の状況を把握し、ニーズに合わせた介護サービスを組み合わせたケアプランを作成・調整・評価する一連のプロセスのことです。
ケアマネジャーにとってケアマネジメント業務は、最適な介護サービスを提案・調整するための中核的な業務です。
具体的には、アセスメント(課題分析)やケアプランの作成、サービス担当者会議の開催、モニタリングなどが含まれます。
ご利用者やご家族の希望を聞きながら、医療・介護の専門職と連携し、個々のニーズに合わせた支援計画を立案・実行することが求められます。
介護保険の給付管理
ケアマネジャーがおこなう介護保険の給付管理業務は、利用者が受けた介護サービスに対する介護給付費を、サービス提供事業者に支払うための手続きです。
具体的には、以下のような業務があります。
- 利用者ごとのサービス利用票の作成・交付
- 事業者ごとのサービス提供票の作成・交付
- 提供実績の確認
- 給付管理票の作成・提出など
給付管理は、介護給付費の審査に不可欠な業務で、毎月必ずおこないます。
書類の作成ミスや提出の遅れがあると事業者への支払いに影響するため、正確性とスケジュール管理が求められます。
認定調査
ケアマネジャーは、要介護認定に認定調査員として関わる場合があります。
市区町村から委託を受け、ご利用者の自宅や入所している施設を訪問し、心身の状況や生活環境などを調査します。
具体的には、以下の項目についての聞き取りです。
- 概況調査:受けているサービスや家族状況、居住環境など
- 基本調査:身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応、特別な医療の6領域74項目
- 特記事項:基本調査だけでは伝えられない選択根拠や特殊な介護の手間など
調査後、調査票を市区町村に提出し、要介護度判定の基礎資料となります。
これらの業務以外にも、細かい業務が多くあります。
なかには、実際に業務範囲外のことを頼まれてしまう事も少なくありません。
ケアマネジャーとしておこなう業務の範囲を明確にし、ご利用者やご家族に説明しておくことが大切です。
ケアマネジャーの活躍できる職場
ケアマネジャーの資格を取得すると、さまざまな職場で活躍できます。
ここでは、ケアマネジャーが働く代表的な職場について、以下の6つを紹介します。
- 居宅介護支援事業所
- 地域包括支援センター
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- グループホーム
- 有料老人ホーム
それぞれの特徴や業務内容を理解して、自分に合った職場を選びましょう。
居宅介護支援事業所
居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが最も多く働いている職場です。
ここでは、自宅で生活しているご利用者に対して、ケアマネジメントをおこないます。
アセスメントからケアプランの作成、サービス担当者会議の開催、モニタリングまで、一連の業務を通してご利用者の自立支援をサポートします。
また、多職種との連携を通じて、地域の介護資源の把握や関係構築にも力を発揮できるでしょう。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、主に高齢者の総合的な相談窓口として機能している公的機関です。
そのなかでケアマネジャーは、要支援の方の介護予防ケアマネジメントや総合相談支援業務、地域の高齢者のさまざまな相談への対応などをおこないます。
また、地域ケア会議の開催や地域の関係機関とのネットワーク構築なども大切な業務です。
地域包括ケアシステムの中核を担う機関で、幅広い業務に携われる魅力があります。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、原則要介護3以上の方が対象で、日常生活全般に介護が必要な方が入所する施設です。
施設ケアマネジャーとして、ご利用者のケアプランの作成や、施設内の多職種連携の調整役を担います。
施設内でのケアマネジメントは、ご利用者の生活の質の向上に直結するため、やりがいを感じられる仕事です。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、リハビリに重点を置いた施設で、在宅生活を見据えたケアマネジメントが求められる職場です。
在宅復帰を目標とするご利用者に対し、施設ケアマネジャーとして、ケアプランの作成やリハビリ職種との連携などに取り組みます。
また、老健には系列の病院があり、施設ケアマネジャーとしての経験を積んだ後は、病院の相談員や地域連携部門などに異動し、さらなるキャリアアップを目指すことも可能です。
病院との連携が密接な職場のため、医療と介護の両方の知識を深められる環境があると言えるでしょう。
グループホーム
グループホームは、認知症の方が少人数で共同生活を送る施設です。
施設ケアマネジャーとして、家庭的な環境のなかで、ご利用者一人ひとりの尊厳を大切にしたケアプランの作成に携わります。
認知症ケアに特化した施設のため、経験を積むことで、認知症ケアの専門性を発揮できる職場と言えるでしょう。
また、グループホームのケアマネジャーは、管理者を兼ねることもあるため、キャリアアップも目指せます。
有料老人ホーム
有料老人ホームには施設形態として以下の3つがあります。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- 健康型有料老人ホーム
このうち、介護付き有料老人ホームの場合は施設ケアマネジャーとして、ご利用者のケアプラン作成や他職種との連携などに従事します。
ご利用者の選択に基づいたサービス提供が特徴であり、個別ニーズに沿ったケアマネジメントが求められます。
ケアマネジャーはどんな時にやりがいを感じる?
ケアマネジャーの仕事は大変と言われますが、やりがいも感じられます。
ご利用者の生活に寄り添い、さまざまな支援をおこないます。
ときには、困難な調整も必要になりますが、最終的にご利用者やご家族から「ありがとう」と言われると、この仕事をしていてよかったと心から感じられるでしょう。
また、ご利用者の状態が改善したときもやりがいを感じます。
- 適切なサービス調整により、寝たきりだった方が車椅子に乗れるようになった
- 認知症の方の症状が安定した
このように、ご利用者の笑顔や安心して生活できるようになった状況を目の当たりにしたときは、大きなやりがいにつながるでしょう。
さらに、多職種協働で困難事例を解決できたときも達成感があります。
ひとりのご利用者を支援するために、さまざまな専門職が知恵を出し合い、連携することがケアマネジャーの仕事の醍醐味です。
チームのまとめ役として、問題解決のために尽力し結果を出せたときは、自分の仕事に誇りを持てるでしょう。
まとめ
本記事では、ケアマネジャーとして働くメリットとデメリット、仕事内容、活躍できる職場について解説しました。
ケアマネジャーは、専門性を高め、キャリアアップを目指せる一方で、資格維持のための時間と費用、心身の負担も伴う仕事です。
しかし、ご利用者の生活の質の向上に貢献できるやりがいは大きいでしょう。
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