療育では、障がい児が社会に適応できるように支援をします。
保育園や幼稚園とは、障がい児との関わり方や仕事内容が少し違います。
転職を考える際は、どのように働きたいのか、転職したい理由等を明確にしながら、転職後のイメージを持つようにしましょう。
目次
【仕事】療育(児童発達支援)とは?
療育とは、障がい児や発達に遅れのある子どもに対する支援のことです。
それぞれの障がい特性や発達に応じた自立支援をします。
公立や民間の保育園や幼稚園よりも小集団で活動する事業所が多いことが特徴です。
保育の現場で培った専門性を活かして、子ども1人ひとりに向き合いたいといった思いで転職される方も多くいます。
療育について
療育とは、「治療」と「教育」を掛け合わせて作られた言葉です。
障がい児のそれぞれの状態にあわせて、自立と社会参加に向けて支援をします。「児童発達支援」といった言葉で、厚生労働省は以下のように定義しています。
児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。
出典:児童発達支援ガイドライン
療育の仕事内容は?
療育の仕事内容は大きく分けると以下の5つです。
- 個別支援計画の作成
- 療育(個別・集団)
- 保護者支援
- 外部との連携
- 事業所運営に関わる事務
1つずつ見ていきましょう。
個別支援計画の作成
個別支援計画とは、子どもの障がい特性や発達状況に応じて、目標や課題を達成するためにどのような支援を提供するかをまとめたものです。
必要に応じて計画の見直し(モニタリング)を行い、いわゆる羅針盤のような書類とも言えます。この書類が支援のスタートとなり、療育の現場へ落とし込んでいくことになります。
療育(個別・集団)
療育での支援は、個別支援と集団支援の2つに分けられます。
対象となる子どもが1人(個別)か複数人(集団)かの違いです。
手先の動きの練習、また集中力をつけることや指示を理解する練習など、個別的な課題にアプローチする側面があります。
お友達との関わり方、社会において適切なコミュニケーションがとれるようになる練習など、場面や相手に応じて適切な関係を築くことを課題とした側面があります。
保護者支援
障がいのある子どもの保護者に対する助言や相談対応です。
子どもの体や心の発達について悩まれる保護者も多くいます。
個別支援計画を作成するための面談や、日々の支援内容や子どもの様子を共有する場で、保護者に寄り添った支援や声掛けを行います。
子どもが療育の場で見せる姿と、家庭で親や兄弟に見せる姿が違うことも多くあり、その中での困りごとや、進学などの成長に伴う困りごとなどを、丁寧にヒアリングします。
保護者が前向きに子どものことを考えられるようにサポートしていくことも、大切な仕事の1つです。
外部との連携
療育施設の運営や、支援に必要な外部の機関との連携を行います。
障がい児の発達にはさまざまな側面からのアプローチが必要になることが多く、支援機関の役割や強みを活かして支援していくことが大切です。
たとえば、家庭環境が複雑な場合、児童相談所や行政とも連携して、保護者や同居家族でのアプローチをすることなどが考えられます。
事業所運営に関わる事務
支援や事業所運営を適切に行うために、個別支援計画やアセスメントなどの利用者個人の書類の作成、管理はもちろん、支援を行った分の給付を受けるための請求業務も行います。
その他、避難訓練や防災など、事業所運営の細かい決まりに沿った運営と事務を行います。
療育ではどんな職業の人が働いている?
療育では、さまざまな資格や専門性を持った職員が連携し、支援を行います。
児童発達支援管理責任者(以下、児発管)は、個別支援計画の作成をします。
作成のための保護者との面談や計画書の説明、作成後のモニタリングなども担当します。
実際に支援を行うのは、保育士や児童指導員といった資格を持つ職員であることが多いです。
そのほか、医療的ケアが必要な障がい児のいる施設では看護師が働いています。
各施設形態の決まりに沿って、支援に必要な専門性のある職員を配置しています。
資格別の詳しい仕事内容も紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
療育で働くきっかけや志望動機は?
療育を転職先として選ぶ人に共通していることは、「子どもが好き」ということです。
子どもの遊びや言葉に興味を持つ方や、子どものおもしろい発想や大人にはない感性が好きといった方は多く見られます。
これまでは規模の大きい保育園で保育の基礎を学んできたけれど、子どもたちに、より丁寧に向き合える環境で働きたい、といった方も転職先として選ぶことが多いようです。
そのほか、子育てを終えたけれどもう一度子どもたちの成長を支える仕事がしたいといった主婦や、学業のかたわら、現場で実践的に経験を積みたいといった保育や福祉を学ぶ学生のアルバイト先としても選ばれることが多いです。
療育にはどんな人が向いている?
子どもが好きな人
療育に限らず、子どもたちと直接関わる仕事において、「子どもが好きであること」は特に重要であると言えます。
子どもと遊ぶのが上手かどうかということよりも、「子どもが好きな遊びや興味のあることを一緒に楽しんでみよう」と思えることが大切です。
気が長く、子どものペースに合わせることができる人
障がいのある子どもに歩幅を合わせるような関わりができることも大切です。
目標や課題を達成するまで、どのくらい時間がかかるのか、どんな段階を経て目標に近づくのかは、やってみないと分からないことばかりです。
気を長く持ち、少なくとも子どものペースに合わせるのが苦ではない、と感じる人は、療育に向いていると言えるでしょう。
子どもの行動を様々な視点から捉えることができる人
子どもの行動に対して、多角的な視点で見たり、考えたりできる人も向いていると言えます。
なぜなら、行動のきっかけやその時の状況を紐解いて考えることが、支援の糸口になるからです。
子どもが状況や場面にふさわしくない行動をとることもあるでしょう。
しかし、そういった場面で、「何がきっかけになったのか?」「どんな時にこの行動をとるのか」など、ご自身が見たことだけで決めつけず、いろんな見方をできることは、大切な資質であると言えます。
【施設】療育施設の種類について
療育を行っている施設は、利用する障がい児の特性や、必要なケアや専門性、また規模の大きさなどにも違いがあり、さまざまです。
それぞれの療育施設の平均月給もあわせて見ていきましょう。
療育施設の平均給与
厚生労働省の「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、それぞれの施設での保育士、児童指導員の月給は以下の通りです。
施設名 | 平均基本給等 |
---|---|
児童発達支援 | 232,590円 |
放課後等デイサービス | 220,200円 |
福祉型障がい児入所施設 | 264,710円 |
医療型障がい児入所施設 | 278,790円 |
出典:厚生労働省 令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要
上記は令和4年12月の状況ですが、前年度と比較すると、こちらの4つの施設においては約10,000円月給が上がっています。
入所型の療育施設の方が月給が高い傾向にあると言えます。
次に、それぞれの療育施設の特徴を解説します。
児童発達支援
未就学の障がい児未就学児への療育を行います。
保育園や幼稚園の降園後に利用する場合もあれば、朝から登園し、3時のおやつの時間頃まで利用する場合もあります。
施設は保育園に似た雰囲気のところが多く、児童発達支援管理責任者や保育士のほか、給食を提供する場合は調理員がいることもあります。
子どもが視覚的に理解しやすいイラストや、知育おもちゃや体幹を整えるおもちゃなど、遊びを取り入れながら療育を行います。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスは、小学生以上高校生以下の障がい児が対象です。
児童指導員、保育士のほか、特別支援の教員免許を持っている方も活躍されています。
小学校、養護学校の下校後に利用します。
1人で自立課題や学校の宿題に取り組める個別スペースや、療育でやることや時間の流れが分かるスケジュール表があることが多いです。
活動の中では、たとえば公園に行って鬼ごっこやかくれんぼなど、ルールのある遊びを支援に取り入れることもあります。
自分の気持ちに折り合いをつけて人と関わることや、距離感を学んだり、社会性を育てるという側面もあります。
福祉型障がい児入所施設
施設に入所し、日常生活に必要な技能や知識を身につけます。
入所型の施設は、知的障がいや精神障がいのある障がい児が、保健センターや医師、児童相談所が必要と判断した際に利用できます。
通所型の施設の職員に加え、障がい児の家族のケアができる職員もいます。
利用する障がい児の家庭環境が複雑な場合、虐待やネグレクトといった背景があることも多いからです。
医療型障がい児入所施設
医療的なケアや日常的な介護が必要となる障がい児が利用します。
こちらも保健センターなどが入所が必要と判断した際に利用できます。福祉型よりも、医師や看護師など、医療的な支援や各機関との連携が取りやすい体制があります。
医療的ケアが必要となると、ご家族の負担は大きく、基本的な家庭の営みが損なわれてしまうことも多いです。
入所施設が福祉型か医療型か、どちらになるかの判断は自治体が行います。
【資格】療育施設で働く職種と資格について
療育では、様々な資格とスキルを持った職員たちが、障がい児の自立支援を行っています。
事業所運営のために必ず配置しなければいけない職種もありますが、無資格でも始められる職種もあります。
まず、それぞれの職種の給与平均を見てみましょう。
職種別の平均給与
職種 | 平均給与額 |
---|---|
福祉・介護職員(※) | 315,350円 |
サービス管理責任者 児童発達支援管理責任者 | 392,720円 |
理学療法士作業療法士 | 385,240円 |
機能訓練担当職員 | 353,190円 |
(※)福祉・介護職員には、児童指導員、保育士が含まれます。
出典:令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要
上記の表は、厚生労働省の「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要」から抜粋した、令和4年9月時点の療育施設のみの平均月給となります。
児童発達支援管理責任者
障がい児1人ひとりに必要な、個別支援計画を作成します。
提供した支援が計画的、効果的に行われているかどうかの評価も行います。
主な業務内容は、以下の通りです。
- 個別支援計画の作成
- 個別支援計画作成のための会議、モニタリング
- 保護者支援(面談、相談対応)
- 療育職員への助言、指導
管理者と兼務する場合、上記に加え、請求業務、自治体へ提出する書類の作成等も行います。
児童発達支援管理責任者は、相談支援または直接支援の実務経験を一定年数以上必要とし、そのうえで自治体が開催する基礎研修を受講しなければなりません。
国家資格による業務経験を実務経験とする取得ルートもあります。
基礎研修後は、見習いの児発管として児発管業務の一部を担当することができます。
その後、実務研修を受講したのち、正式な児発管として名乗り、業務を行うことができます。
保育士
保育士は、児童福祉施設で保育を行う専門職です。
子どもの保育や発達の知識を持ち、子どもの育ちに携わる仕事においてはベースとなる資格と言えます。
保育士の主な業務内容は以下の通りです。
- 療育
- 保護者支援(支援内容、相談対応)
- 支援に必要な道具の準備、管理
主となって療育を行う職種ですので、利用している障がい児が来所する前やあとの準備、清掃などもします。
また、連絡帳や保護者送迎時のコミュニケーションの中で、日々の療育の内容と障がい児の様子などを密に伝えていきます。
厚生労働大臣が定める指定の学校などで、決められた科目を履修し卒業したのち、国家試験に合格し、保育士として登録する必要があります。
実務経験を積んで国家資格を受験する方法もあります。
児童指導員
児童指導員とは、療育施設のほか児童養護施設などで、障がい児や家庭環境が複雑な子どもに対し、療育や支援を提供する職種です。
業務内容は保育士とほとんど変わりませんが、送迎サービスのある事業所によっては、養護学校や小学校、保育園への迎え、療育後の自宅への送りを行う場合があります。
児童指導員は、一定の条件を満たすことで得られる「任用資格」です。大学などで指定された科目の履修、社会福祉士などの資格の取得、実務経験を積むことなどが条件となります。
無資格でも高校を卒業していれば、療育の現場で2年の実務経験を積むことで、児童指導員任用資格が得られます。
機能訓練担当職員
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、障がい児の体の動きや機能的な言語能力、日常的に必要な動作の習得など、身体のことについて、より高い専門性を持って支援する職種です。
機能訓練担当職員の主な業務内容は以下の通りです。
- 療育での機能訓練
- 療育職員へのアドバイス、ヒアリング
大学や専門学校などの養成校で学び、国家資格に合格する必要があります。
療育施設の規模にもよりますが、常駐している場合や、他の施設や医療機関から委託を受けて支援に入る場合があります。
看護師
重度心身障がいのある子どもなど、医療的ケアが必要な障がい児が利用する施設に配置されています。
療育においての看護師の主な業務内容は以下の通りです。
- 定期的なバイタルチェック(必要に応じて血圧、体温、脈拍など)
- 急変時の対応、処置
- 各医療機関との連携
- 保護者対応
医療機関への入院や通院が必要な場合の保護者対応も担当します。
【求人】療育の求人募集の応募条件にはどんなものがある?
療育の求人募集の見出しを見ると、募集している事業所が何を求めているのかが分かります。
ご自身が、給与面や待遇のよいところを希望しているのか、または職場の人間関係のストレスなく働きたいのかなど、ここは譲れないといった条件を押さえた上で探してみるのがおすすめです。
保有資格での募集条件について
「保育士資格保持者」「児童発達支援管理責任者を募集」など、見出しに資格名が入っている場合は、その資格を持っていることが最低条件になると言えるでしょう。
資格を持っていない場合、求人元の事業所とマッチする可能性は下がるかもしれません。
その資格を取得するために努力していることや、転職後にどのようにキャリアを積んで行きたいのかなどをアピールしてみましょう。
雇用形態での募集条件について
児童発達支援、放課後等デイサービスなどでは、時間帯や担当する業務によっては、短時間のパートやアルバイトの募集も多く見られます。
なぜなら、学校や保育園の下校や降園のあとに利用する事業所ですので、利用者がいる時間は特に人手が欲しい、といった事業所も少なくないからです。
子どもの迎えの時間があるので短時間だけ働きたい、資格の勉強をして現場でも実践的に経験を積んでいきたい、といった方は、雇用形態に注目して探してみましょう。
人柄での募集条件について
職員の人柄や子育て経験を重視する事業所もあります。
純粋に子どもが好きだと思う気持ちや、子育てを経験したからこそ分かる親の気持ちや大変さなど、その人自身の人柄や経験を活かして欲しいと考える場合もあります。
事業所のホームページやSNSがあれば、ぜひ見てみましょう。
サイトや、SNSからも事業所の雰囲気が分かります。ご自身の働きたい職場の雰囲気に近いかどうか、判断材料の1つになるかもしれません。
「ケア人材バンク」では、いろいろな特色のある事業所の求人を見ることができます。
ご自身の希望する勤務地や待遇などで求人が出ていないか、ぜひ一度チェックしてみてくださいね。
【キャリア】療育での転職、キャリアアップ・キャリアパスご紹介
ここまで療育の仕事内容や職種などを解説してきましたが、療育の仕事でどのようにキャリアを積んでいくのかも気になりますよね。
入職時の実務経験や資格ごとに、どのようにキャリアアップしていくのか、想定されるキャリアパスをいくつか紹介します。
療育でよくあるキャリアパスの例
資格を取るにはある程度の実務経験が必要になることが多いので、先を見据えて経験を積んでいけるといいですね。では、いくつか例を挙げて紹介します。
無資格だけれど療育の仕事にチャレンジしたい、長く続けたい、という方がイメージしやすいキャリアパスです。
高校を卒業していれば、療育の現場で2年働くことで、児童指導員任用資格を得られます。
児童指導員は、他の職種よりも障がい児と直接関わる時間が長く、成長を一番近くで見ることができます。
キャリアアップを見据えて、児童指導員の時期にいろんな支援の手立てや障がい児の発達と支援方法を実践的に学ぶことができます。
療育の現場で機能訓練担当職員として経験を積み、障がい児の親や家庭への理解を深め、児童発達支援管理責任者として活躍するキャリアもあります。
規模の小さい児童発達支援施設や放課後等デイサービス事業所の場合、機能訓練担当職員は、他の医療機関から嘱託されていることが多いです。
児童発達センターや障がい児入所施設など、規模の大きい事業所や法人を選ぶのがおすすめです。
療育は、無資格でも働ける場合が多く、特に「資格の勉強をする時間も確保しながら働きたい」方におすすめです。
保育士や幼稚園教諭の資格の勉強をしながら働いている人も多く、知識と経験を積みながら確実にステップアップしたいという方にはぴったりです。
また、事業所によりますが、資格を取ることで手当がついたり、正社員へのキャリアアップがしやすくなったりします。
まとめ
今回は、療育の仕事内容と、転職後の働き方・キャリアアップについて解説しました。
療育の仕事を実際にやってみると、それまでのご自身の障がい児のイメージとは違うと感じることも多くあると思います。
また、障がい児1人ひとりの個性や得意なこと・苦手なこともさまざまです。
そのような子どもたちが楽しく生きられるように、療育があります。やればやるほど面白く、また課題や困難もありますが、やりがいも多く感じられる仕事です。
ケア人材バンクでは、転職支援サービスを行っています。「療育に転職して、もっとやりがいを持って働きたい」「保育士としてのキャリアを広げたい」など、転職に関するご相談はお任せください!
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