ケアマネジャーとしてさらなるキャリアアップを目指すなら「主任ケアマネ」が選択肢の一つ。
その専門性や役割が重視される昨今、「主任ケアマネの要件」を満たし資格を取得するにはどうすれば良いのでしょうか?
この記事では、必須となる「実務経験」年数や「主任介護支援専門員研修」の詳細、受講要件を詳しく解説。
さらに、気になる「年収の比較」事情や資格取得の「メリット」、ケアマネとの「業務の違い」にも触れ、ステップアップに必要な情報を網羅します。
目次
- 主任ケアマネジャーになるには、ケアマネジャー5年以上の実務経験年数が必要
- 主任ケアマネジャーは、ケアマネジャーの指導や助言、サポートを行う
- 主任ケアマネジャーの需要は高く、必要としている事業所が多い
主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とは
主任ケアマネジャー(正式名称:主任介護支援専門員)は、ケアマネジャー(介護支援専門員)の質の向上や地域包括ケアシステムの推進を目的に2006年に創設された専門職です。
単に経験年数が長いだけでなく、他のケアマネジャーへの指導・育成、実践的なスーパーバイズ、困難事例への対応支援、質の高いケアプラン作成への助言など、幅広い役割を担います。
また、医療や福祉の関係機関との多職種連携を円滑に進める要となり、特に地域包括支援センターでは中核的な存在として活躍が期待されています。
このように、主任ケアマネジャーには高度な専門知識やリーダーシップが求められるのです。
ここでは、その具体的な業務内容や役割について、さらに詳しく解説していきます。
主任ケアマネジャーの仕事・職場
主任ケアマネジャーの仕事は、通常の利用者様のケアマネジメント業務に加えて、ケアマネジャーに対するサポート業務や管理業務が加わります。
新人ケアマネは、研修でケアプラン作成方法など学んではいますが、実際に自分で作成しようとするとわからないことも多くあります。
そのため、最初の3か月程度は利用者様との契約からケアプランの作成、サービス担当者会議、モニタリングなど主マネと同行したり一緒に考えたりすることも多いです。
主任ケアマネが働く職場と仕事内容は以下のようになります。
職場 | 主任ケアマネジャーの仕事内容 |
---|---|
居宅介護支援事業所 | ・管理者の場合は管理業務 ・利用者様のケアマネジメント業務 ・ケアマネの指導や育成 ・介護サービス事業者との連絡調整 ・地域の介護課題の発見や問題解決 ・事例検討会の開催 ・他事業所との連携 |
地域包括支援センター | ・管理者の場合は管理業務 ・利用者様の介護予防ケアマネジメント業務 ・地域の高齢者の相談対応 ・介護サービス事業者との連絡調整 ・ケアマネの指導や育成 ・地域の介護課題の発見や問題解決 ・事例検討会や地域ケア会議の開催 ・地域のケアマネへのサポートやアドバイス |
介護老人福祉施設 | ・入所者様のケアプランの作成 ・ケアマネのリーダーとしての指導や育成 ・介護業務(介護士や生活相談員を兼務することが多い) |
介護老人福祉施設で働く主任ケアマネは、実際の介護業務を行うことも多く、夜勤をする場合もあります。
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主任ケアマネジャーの役割・重要性
主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)の役割は多岐にわたり、その重要性はケアマネジメントの質を左右するほど高まっています。
まず制度的な側面から見ると、主任ケアマネジャーの配置は居宅介護支援事業所と地域包括支援センターで求められています。特に居宅介護支援事業所においては、管理者が主任ケアマネジャーであることが原則とされており(※2027年3月まで経過措置期間中)、事業所の運営とサービスの質担保において中心的な役割を担います。
事業所内での主な役割は、他のケアマネジャー(介護支援専門員)への指導・育成、そして専門的な知識・技術に基づくスーパーバイズです。
これにより、個々のケアマネジャーのスキルアップだけでなく、事業所全体のケアマネジメントの質向上を推進します。
また、困難事例への対応について助言を行ったり、チーム内でカンファレンスを主導したりと、課題解決に向けた取り組みをリードすることも重要な責務です。
さらに、その役割は地域全体へと広がります。地域包括支援センター等で中核的な機能を担い、医療・介護・福祉などの専門職をつなぐ多職種連携の要となります。
地域ケア会議などを通じて、担当利用者だけでなく地域全体の生活課題やニーズを把握・分析し、行政への政策提言や新たなサービス開発につなげるなど、より良い地域づくりに貢献することも期待されています。
このように、主任ケアマネジャーは、個々の利用者支援の質を高めることはもちろん、事業所のサービス向上、さらには地域全体のケアマネジメント機能を強化し、包括的な支援体制を支えるという、極めて重要な役割を持つ専門職なのです。
主任ケアマネとケアマネ 何が違う?
主任ケアマネは、5年以上の実務経験後に研修を受けて資格を取得するため、ケアマネとは仕事内容や役割が異なります。
仕事内容・役割はどう変わる?
ケアマネの主な業務は、担当する利用者様のケアマネジメントを担当することです。
主任ケアマネジャーも同様に利用者様を担当しますが、それ以外にも、主任ケアマネとしての業務を行います。
また、主任ケアマネでも、居宅介護支援事業所と介護老人福祉施設では業務に違いがあります。
居宅介護支援事業所 | 介護老人福祉施設 | |
---|---|---|
主任ケアマネジャー | ・管理者の場合は管理業務 ・利用者様のケアマネジメント業務 ・ケアマネの指導や育成 ・地域の介護課題の発見や問題解決 ・事例検討会の開催 ・他事業所との連携 | ・ケアマネの指導や育成 ・入所者様のケアプランの作成 ・事例検討会の開催 ・介護業務 (介護士や生活相談員を兼務することが多い) |
ケアマネジャー | ・利用者様のケアマネジメント業務 ・他事業所との連携 ・主任ケアマネの補助 | ・入所者様のケアプランの作成 ・介護業務 (介護士や生活相談員を兼務することが多い) |
事例検討会とは?
普段は別の事業所や施設で働いているケアマネが集まり、それぞれが担当している利用者様の情報について意見交換をして、理解を深める会です。
事例検討会をすることで、その地域のケアマネの能力や知識が向上すれば、地域全体のケアマネジメント能力の向上につながります。
必要なスキル・能力の違いは?
主任ケアマネは5年以上の実務経験年数があり、法定研修の主任介護支援専門員研修を受講して資格を取得しています。
そのため、経験や知識も豊富で他のケアマネに指導や助言ができるスキルを持っているのです。
ケアマネジャー業務を行うだけでなく、事業所内のケアマネを指導したり他事業所のケアマネと連携を取ったり、より高度なマネジメント能力が必要になります。
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主任ケアマネにはいつからなれるのでしょうか?
主任ケアマネジャーになる条件は、ケアマネの資格があることが前提となります。しかし、ケアマネの資格があれば誰でも主任ケアマネになれるわけではありません。
ここからは、主任ケアマネになる方法を紹介していきます。
step①.ケアマネジャーになる
主任ケアマネジャーになるには、まずはケアマネジャーの資格を取得しなければなりません。
ケアマネになるための「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験するには、看護師や介護福祉士など法定資格に基づいた業務に従事した期間が5年以上必要です。
試験に合格すると「介護支援専門員実務研修」を受講することになります。
スケジュールは各都道府県によって異なりますが、3か月程度の期間で講義と実地研修が行われます。研修を修了すると資格証が付与され、ケアマネジャーとして業務が可能です。
step②.主任介護支援専門員研修(法定研修)の受講要件を満たす
主任ケアマネになるには「主任介護支援専門員研修」を修了する必要があります。
例えば愛知県の場合、研修の受講要件は下記のいずれかになります。
一般的には、ケアマネとして5年(60か月)以上の実務経験を積んで、主任ケアマネ研修を受講する人が多いです。
step③.主任介護支援専門員研修を受講する
「主任介護支援専門員研修」は都道府県ごとに開催されるため、研修内容や実施方法、日程もそれぞれ異なります。
愛知県の場合、研修時間は70時間(12日間)で受講料は6万7,000円です。
愛知県で行われる研修内容は以下の通りです。
- 主任介護支援専門員の役割と視点
- ケアマネジメントの実践における倫理的な課題に対する支援
- ターミナルケア
- 人材育成及び業務管理
- 運営管理におけるリスクマネジメント
- ケアマネジメントに必要な医療との連携 及び他職種協働の実現
- 地域援助技術
- 対人援助者監督指導
- 個別事例を通じた介護支援専門員に対 する指導・支援の展開
このように主任ケアマネは、ケアマネを指導する立場にあるため、人材育成や監督指導の方法を学びます。
また、地域の問題を解決していく力をつけるために、地域援助技術の講座もあるのです。
参考:公益財団法人愛知県シルバーサービス振興会 令和5年度主任介護支援専門員研修受講のご案内
step④.5年に1回、主任介護支援専門員更新研修を受講する
主任ケアマネジャーの資格は5年ごとの更新制です。そのため有効期間が切れる前に「主任介護支援専門員更新研修」を受講する必要があります。
愛知県の場合、以下のいずれかに該当すると研修が受講できます。
研修期間は48時間(8日間)で受講料は6万円です。各都道府県で日程や研修内容、受講料など異なるため、実際に研修を受講する場合は確認が必要です。
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主任ケアマネジャーの年収
主任ケアマネジャーの年収を明確に示したデータはありませんが、厚生労働省のデータによると、2020年のケアマネジャーの給与額は27万6,000円、賞与が67万6,100円となっています。
このデータをまとめると、ケアマネジャーの年収は約400万円です。
介護報酬を上乗せするために「特定事業所加算」を取得している事業所は多くあります。
そのためには、主任ケアマネを配置して条件を満たすことが重要です。
具体的には、事業所内での研修や24時間の連絡体制を整える必要があります。
このような条件を満たすと、介護報酬が増額され、給与や賞与に反映される可能性があるのです。
主任ケアマネジャーには、通常、資格手当や管理者手当が付くことが多く、ケアマネジャーよりは年収が高くなることが一般的です。
出典元:厚生労働省 賃金構造基本統計調査
主任ケアマネとケアマネの年収の違い
「ケア人材バンク」に掲載されている求人情報から、以下の求人の年収を調査したところ、次のようになりました。
居宅介護支援事業所(東京都内)の主任ケアマネの募集求人
居宅介護支援事務所(東京都内)の居宅ケアマネの募集求人
※2025年4月11日時点「ケア人材バンク」求人情報の平均月給と最高月給の12か月分で算出
多くの事業所で、ケアマネよりも主任ケアマネの方の年収が高いケースが多いようです。
市場価値UP!主任ケアマネの具体的なメリット4選
主任ケアマネジャーの資格を取得し、その役割を担うことには、ケアマネジャーとしてのキャリアを豊かにする多くのメリットがあります。
専門性を深められるだけでなく、活躍のフィールドや仕事の幅も広がります。
ここでは、主任ケアマネになることで得られる主なメリットとして、特に以下の4つのポイントに絞って詳しく見ていきましょう。
事業所からの高い需要や転職市場での有利さ、後進を指導・育成する立場ならではのやりがい、そして事業所の垣根を越えた交流の機会など、具体的な魅力をご紹介します。
施設や事業所からの需要が高い
主任ケアマネジャーは、介護施設や居宅介護支援事業所など、多くの現場で非常に需要が高い専門職です。
事業所内で他のケアマネジャーを指導・育成したり、医療機関など多職種との円滑な連携を図るための調整能力は、質の高いサービス提供に不可欠です。
このように、高度な専門知識・技術に加えて、管理能力や調整能力といった複合的なスキルを持つ主任ケアマネジャーは、多くの事業所にとって必要不可欠な存在であり、常に高い求人ニーズがあります。
転職しやすくキャリアパスも多様化
主任ケアマネジャーの資格を持つことは、転職市場において大きなアドバンテージとなります。
最大の理由は、地域包括支援センターや全ての居宅介護支援事業所において、その配置が(一部は努力義務や経過措置を含みつつも)制度上求められている点です。
特に居宅介護支援事業所では、管理者が主任ケアマネジャーであることが原則化(※2027年3月まで経過措置あり)されており、管理者候補としての求人も少なくありません。
さらに、質の高い事業所運営を評価する「特定事業所加算」の算定要件にも、常勤専従の主任ケアマネジャー配置が必須となっています。
この加算は事業所の介護報酬増に直結するため、経営安定化やサービスの質をアピールしたい多くの事業所が、積極的に主任ケアマネジャーの採用・確保に動いています。
結果として、主任ケアマネジャーが不足している事業所は多く、資格保有者はより良い条件や希望する働き方を選んで転職しやすく、多様なキャリアパスを描くことが可能です。
ケアマネジャーへの助言や指導する立場
主任ケアマネジャーの役割の中核をなすのが、他のケアマネジャーに対する専門的な助言や指導、そして育成です。
これは単に知識を教えるだけでなく、日々のOJT(On-the-Job Training)や事例検討、個別スーパーバイズなどを通じて、ケアマネ一人ひとりのスキルアップと専門性の向上をサポートする重要な責務です。
利用者様の困難事例への対応方法を共に考えたり、時にはケアマネの悩みや葛藤に寄り添ったりと、高いコミュニケーション能力やリーダーシップが求められます。
指導者としての力量が問われる場面も多くありますが、後進の成長を間近で支援し、チーム全体のケアマネジメントの質を高めていくプロセスは、大きなやりがいと達成感につながります。
また、指導を通じて自身の知識や経験を振り返ることは、主任ケアマネジャー自身の専門性や人間力をさらに高める機会ともなるでしょう。
他事業所との交流ができる
主任ケアマネジャーになると、自分が所属する事業所の枠を超え、他事業所のケアマネジャーや地域の様々な専門職との交流機会が格段に増えます。
地域のケアマネジャーが集まる合同事例検討会や地域ケア会議、各種研修会などが、その代表的な場となるでしょう。
こうした交流を通じて、多様な視点からの情報交換が活発に行われ、自事業所だけでは得られない知識やノウハウ、地域の最新動向、あるいは課題解決の新たな糸口を見つけることができます。
異なる背景を持つ専門職との連携は、自身のスキルアップや視野拡大に直結し、より多角的で質の高いケアマネジメントの実践を可能にします。
また、こうした活動を通じて築かれる幅広いネットワーク(人脈)は、日々の業務はもちろん、長期的なキャリアにおいても貴重な財産となるはずです。
まとめ
主任ケアマネのニーズは高まってきています。地域包括支援センターに配置義務があることや、居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネに限定されたことが大きな理由です。
このことから、新しく主任ケアマネを採用するか、現在所属しているケアマネに主任ケアマネになってもらうか、どちらかの方法しかありません。
主任ケアマネの資格を保有している人は、より有利な事業所に転職できるチャンスです。
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